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03*
 だが、小さくなった彼の全力疾走なんて所詮、亀の歩みと同じようなもの。黒い靄は軽く跳躍すると頭上を通過し、再び青年の目の前に現れる。黒い、黒い漆黒。暫く目が離せないで居ると、突然漆黒の真ん中が開きそこに赤が加わる。ゆらゆらと揺れる輪郭が徐々にハッキリと形を作り始め時、始めてその赤い部分が口なのだと言うことが判った。
「グルルル…」
 低い唸り声が青年の耳に届く。目の前には真っ黒な獣が一匹。光る金の眼と開かれた真っ赤な口から覗く白い牙が見える。
『ヤバイヤバイヤバイヤバイ!!』
 追い込まれた状況は芳しくない。最早、冷静な判断など出来るはずもない。また同じようなことを繰り返すのかと青年は思う。しかし身体は直面した危険から逃げだそうと無意識のうちに動いた。素早く後ろに振り返り今度はドアの方目掛けて走り出す。背後動く獣の気配。あっという間もなくその気配が青年へと接近してきたと思うと、次の瞬間彼の体は凄い力で地面に叩きつけられた。
「…がっ………はっ…」
 強い力でのタックル。背中を強打され息が詰まる。
 肺にダメージをもらってしまったせいか、息をする度にそこが軋むような痛みを訴えて堪らない。芋虫の様に埋くまって痛みに耐えていると、突然蛍光灯の光が遮られ青年の身体の回りに影が出来た。
「ゴロゴロ」
 薄目を開けて天井を仰ぐ。巨大な獣が青年を押さえ込む様にして其処にいる。金の瞳が楽しそうに弧を描く。口が開き生暖かい息が顔にかかった。
『殺される!』
 圧倒的な力に為す術の無い青年は、これから来るであろう痛みと恐怖に耐えきれず、堅く目を閉じた。しかし…
「ざり」
 生温い濡れた感触が頬に伝わる。
「ざり」
 それは、やけにざらついていて、不思議な感じがした。
 暫くすると、今度は冷たい感触が腹に伝わる。何度も腹を擦るそれは、妙な湿り気を含んでいてくすぐったい。何となくその行動は、自分の匂いを嗅いでいるもののだという事を理解すると、青年は無意識に身を捩りそれから逃げようと藻掻いた。
 獣は暫く青年の匂いを嗅いでいたが、静かに顔を遠ざけると、器用に前足を使って彼の体を仰向けにさせた。再び近づいてくる鼻先。今度は鼻で腹をつつきながら、徐々に鼻の先端を下腹部へ移動させていく。
「うあっ!?」
 冷たい感触が下肢に触れる。青年が驚いて目を見開き上半身を起こし、状況を確認しようと動く。獣は先程から湿る鼻先で彼の下半身を何度も擦り上げていた。その度にズボンが少しずつ濡れて、まるでお漏らしをしているかのようになって恥ずかしい。
「…逃げなきゃ…」
 青年は何とか体を反転させようと上半身だけ捻った。このまま下半身も体制を変え、俯せになろうとした瞬間感じた下半身への違和感。
「な…に…?」
 恐る恐る視線を移動すると獣の爪が衣服を引き裂いたところで、ボロボロになったジーンズの裂け目から青年の肌が外気に晒される。獣は更に器用に前足を使い布を取り払うと、ざりざりした舌を剥き出しになった青年の萎えたペニスに這わせた。
「なっ…っ!?」
 …信じられない光景が広がっている。
 それが何であるか青年は混乱下頭で必死に考える。
 …俺の上に乗りかかる獣が、俺の下腹部を舐めている。
 何度見てもその光景を否定することは難しい。
 …一体…これはドウイウコトダ?
 暫く思考が停止する。
 その間も、獣は休むことなく彼の下腹部を舐め回していた。
「…っ…はぁ…はぁ…」
 自分の体の変化に気付いたのは、それから暫く経ってからだった。妙に息苦しい。いや、息苦しいと言うよりは、何だろう。体が疼くと言った方が正確かもしれない。呼吸が徐々に早くなり、息苦しくなってくる。体の芯から火照る様で視界が涙で滲んでしまう。獣の舌に自分の陰茎が反応するのが判って混乱していく頭。どうしていいのか、何が起こっているのか判らずに狼狽えている彼に気付いているのか、獣は一度喉を鳴らすとすっと顔を離した。
 中途半端に放り出された体が刺激を求めて動く。濡らされた下腹部が外気に触れ冷たくなるのに、完全に勃起したペニスだけが妙に熱い。疼きに耐えるように足を擦り合わせていると、獣が前足の爪を出し彼の背中と床の間に割り込ませて、器用に彼の体を転がし反転させる。俯せの状態にされた青年は床とこんにちはをしている状態。相変わらず下半身の疼きは解消される事はなく、痺れを切らした彼の頭は理性よりも本能を選ぶ。この際なんだって良い。今はこの熱を吐き出してしまいたい。躊躇わずにペニスに触れると、青年は迷うことなく扱き始めた。
「…ふっ…ん…」
 いつも以上に快楽が強いのに戸惑いながらも手を止めることができない。獣に見られてるのがどうとか、今はそんな事は関係なかった。腰を揺らしながら自慰に耽って居ると、背後で獣が動く気配を感じる。獣は前足の爪をジーンズに引っかけると、器用に手を動かしそれをずらした。ボロボロになったジーンズはすんなり膝まで落とされる。今度はトランクスに爪を引っ掛け同じ様に下ろされると、青年の尻は外気に晒された。
「あ……くっ……」
 だが、今の彼にはそんなことに構っていられる余裕など無い。一刻も早く溜まった熱を解放したくて、必死に手を動かしているのだから。
「うぁっ!」
 尻への違和感を感じたのは、尻が獣の前に晒されてから直ぐの事だった。ざらついた舌が、今度は有ろう事か彼の尻を舐め始める。割れ目に舌を這わせるようにして何度か舐めた後、狙いを定めたかのように尻の窄みの周辺だけを重点的に舐め始める。
「いやっ、いやだっ!」
 普段味わう事の有るはずの無い感覚に、青年の頭は混乱する。その感触から逃げようと腰を揺らすが、舌は執拗にそこばかりを舐め、挙げ句の果てには窄まりの中に舌をねじ込まれてしまった。
「やだぁ……うぅ…」
 中で蠢く湿ったざらつき。出たり入ったりを繰り返しながら、たっぷり濡らされていく。不快に思ったのは最初の内だけで、信じられないがもっと別の刺激が欲しくて、無意識に彼は自ら腰を揺らしていた。獣もそれを理解していたらしく、暫くしてから舌が穴の中から引き抜かれる。
「あふ…」
 獣の前足が腹の下に差し込まれ、腰だけ高く突き上げるポーズにされる。ぬるりとした感触と熱い物が、さっきまで散々濡らされたアナルに宛てがわれる。何をされるのか頭では理解できていたが、それを拒否することは今の彼には難しい。焦らされた体が、強い刺激を求め、期待してしまう。
 獣は一度、楽しそうに喉を鳴らしてから、一気に青年の身体を貫いた。
「う…あぁぁああっっ!!」
 予想していなかったもの凄い熱と圧迫感。排泄器官に埋められた質量の大きさに目を見開く。何よりも予想外だったのは、獣のペニスにある突起物。それが腸内で擦れて半端の無い痛みを植え付ける。獣はそんな彼のことなど気にすることなく、腰を乱暴に動かすだけ。
「うぐ…やっ…っっ!」
 痛みで意識が一気に現実に引き戻される。勃っていたはずの青年のペニスは、今ではすっかり縮こまってしまっていた。
 何でこんなことに…
 もう、何がなんだか訳が分からない。体の中から響く鈍い痛み。青年は止めて欲しくて必死に抵抗する。そんな彼の態度に気を悪くしたのか、獣が更に体重をかけてくる。首筋に当たる湿った空気。鋭く硬い物がが首に当たる感触がする。それが獣の牙だと気付いた瞬間、青年は恐怖で動けなくなった。
 少しでも動いたら殺される…
 鋭い牙を容赦なく喉に突き立てられる。そんな思いから、彼は身動きできずにいた。

 獣は飽きることなく彼の体を貪っている。何度熱を中に吐き出されたのか判らない。もう、頭は考えることを放棄してしまっていた。
 獣が何度目かの射精を果たす。腹に感じる熱が煩わしい。
「ざり」
 突然、首筋に生暖かくざらついたモノが押し当てられた。
「あうっ」
 全く予想していなかった刺激に、彼の背は無意識に撓った。体が跳ねたせいで、中にある獣の突起物のあるペニスを締め付けてしまう。嫌でも体の中にあるモノを認識させられて、青年の顔が真っ赤に染まる。一度『ソレ』を感じてしまうと、スイッチが入ってしまったかのように体が熱くなっていくのを止められない。痛みだけを植え付けていたはずの獣の性器から持たらされる微妙な刺激ですら、甘い快楽へと変わるような気がして、体が震えだした。
 首から背へ獣の舌が移動する。湿ったざらつきに体は素直に反応を返す。舐められる度に跳ねる体。塞がれた穴から注ぎ込まれた白濁と腸液が溢れ出す。中にあるモノはまだ萎えることなくその存在を誇示しているのに、獣は青年の背を舐めるだけで、一向に注挿を再開する気配を見せない。そんな獣の態度が焦れったく感じるのが仕方なくて、痺れを切らした青年の方が獣を誘うように腰を揺らし始めた。
 多分、自分は狂っていたのだろう。
 早く…早く…。
 そう気持ちが焦る。
 早く埋められたモノで中を掻き乱して欲しい…。
 何故、そう思ったのかは判らないが、火照った体が獣の熱を求めている。痛みと恐怖しか与えてくれなかった行為を再開して欲しいと。
 咥えたモノを締め付けて獣を煽ると、獣は満足そうに喉を鳴らし、止めていた腰をの動きを再開した。
 揺れる身体と響く水音。結合部から零れる卑猥なそれに聴覚が煽られる。痛みを伴ったはずの行為に体が興奮する。獣の突起物で中を抉られるのが、物凄く気持ち良い。
「んぁ……ふ…」
 いつの間にか、すっかり萎えて縮こまっていたはずの彼のペニスが復活し、先端から先走りをこぼしている。さっきとは全然違う。痛みですら快楽に置き換える都合良さに感心しながらも、本能を剥き出しにされた躯は、貪欲に更なる刺激を求めた。
「ひゃうっ!」
 時々獣のペニスが前立腺を掠めると、痛さと快楽で星が飛ぶ。獣は以外と果てるのが早く中々イケないもどかしさはあったが、枯れることなく直ぐに回復するペニスに乱暴に中を擦られると、そんなことどうでも良くなるほど満たされていく気持ちになる。
「あっ…あ、あっ」
 口からこぼれるのは喘ぎだけ。

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