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07*
「なぁ、ライアン…」
 ライアンの胸に頭を擦り寄せノアは甘えたような声で呟く。
「…セックス…しようか」
「……え?」
 急に強請られたことに驚いたらしい。何時もとは違う反応を返すライアンが新鮮で楽しくなる。ライアンの腕を解くと、上体を起こし軽く彼の肩を押してソファに押し倒す。抵抗される前に乗り上げライアンの身体を跨ぐと自分から仕掛けるように深いキスを交わした。
「のあっ……!?」
「ライアンとしたいな、今、物凄く」
 さて、ライアンの手を一体何処に導けばいいのだろう。持ち上げた相手の手に軽く口付けてノアは少し考える。殆ど経験が無いためどうすれば相手が動きやすいかなんて判らない。取り敢えず自分の頬に手を導いてみるが、これは何か違う気がして首を傾げた。
「何で?」
「んー…何となく」
 今度は胸に移動してみる。夜にされるときのように指を胸の突起に絡ませてみるが余り得られない快感に少しだけ不機嫌な表情を浮かべて溜息。
「自分でやると駄目だね。それじゃあこっち?」
 次は何処だっけ? そんな事を考えながらライアンの手を下に移動すると、まだ反応も見せない前に触れさせる。
「っっ!?」
「あっ…」
 少しだけ身体に灯る熱。成る程。此処は確かに自分で慰めるときに必ず触れる場所だとノアが笑う。暫くライアンの手で自分の股間に刺激を与えるが、段々別の場所が疼き出しノアは緩く首を振った。
「……そっか…今はこっちのが…すき…」
 一度腰を浮かせて脱ぎ取るズボンと下着。下半身を覆っていた布が無くなると、もう一度ライアンの手を掴み指を口に含む。
「………これは…えっと……」
 自分の下でライアンが間抜けな声を上げる。
「…はひ…?」
 唾液を絡ませて濡らした指を躊躇うことなく後孔に導くと、自分の指を添えて一気に中に埋めてしまう。するとどうだろう。
「あっ!」
 先程とは全然違う喘ぎ声が自分の口から無意識に出た。
「んっ……ぁ……やっぱり、こっちが…すきだ」
 ライアンの指の感触を確かめるように中を締め付けながらノアが微笑む。ライアンの指を使って自分で其処を解していると、触れもしないのに段々と勃ちあがるノアの性器から、苦しそうにカウパーが滲み出し陰茎を濡らす。
「ノア?」
「はやく…アンタが…ほしぃ…」
 まだ受け入れる事に慣れている訳ではない。それでも、この身体はライアンと繋がることを期待している。勿論、身体だけではなくノアの心も。
「凄い…煽られる」
「…ぇ…?」
 一度ノアの頬を左手で撫でた後、ライアンが唐突にノアの中から指を引き抜いた。
「ひゃぅっ!? なんっ…」
「お前が煽ったんだからな! 文句は言うなよっ!」
 自分の下から聞こえてくる切羽詰まった声。ジーンズのファスナーが降りる音がし、抱え上げられた腰が移動させられる。これはもしかしてと期待した直後、未だ自分の指が挿入り込んだままの其処に宛てがわれる覚えのある滑りと熱さ。
「らい……あ……ん…?」
「欲しいんだろ? 沢山やるから、指、抜いて」
 その言葉に素直に頷くと、ノアは埋めていた自分の指を引き抜いた。
「ほら」
 指が無くなったのと入れ替わりにライアンの性器が其処に触れゆっくりと腰を下ろされ呑み込まされる。昨夜も行為はしたばかりだ。身体はまだその形を忘れておらず、素直にその大きさに広がっていくそこ。先端を呑み込まされ、腰をゆるやかに落とされて中に深く埋められていく熱。雁の部分が中を擦り、少しずつ太くなっていくそれがノアの狭い内壁を押し広げて進む。
「らいっ……んっ…」
 ライアンの腹に手を付けて内股を震わせながら熱の籠もった吐息を零しノアはそれを受け入れていく。騎乗位なんて久しぶりに見るが、今まで抱いてきた誰よりも扇情的で眩暈がするとライアンは思った。直ぐに突き入れたい衝動を抑えながら、ノアの身体がこれ以上強張って動けなくならない様に少しずつ、少しずつ繋がりを深くしていく。やたらと時間だけは掛かるが、それでも構わないと思う自分に思わず苦笑が零れた。
「…ああ、やっぱりお前の事が好きだ。だから傷つけたくないし、大事にしたい」
 最も太い所で一度止まる動き。何時もはライアンが腰を動かす事で其処を一気に埋めてしまうせいか、自分で呑み込むのは少し辛いとノアが緩く首を振る。
「大丈夫だ。ほら、そのまま腰を下ろして。そしたら自分の体重で身体が沈んでいくから」
 そうしたら、今以上にもっと深くに繋がれるんだよ。そう囁くと、細く長い息を吐いたノアが覚悟を決めたように腕の力を抜いた。
「うぁっ…あぁあぁっ!」
 支えを失った事で重力に逆らえずにノアの腰がライアンの腹へと落ちる。下から持ち上げられる内臓の感覚に海老ぞりに撓るノアの背。天井を向いてしまったため表情を見ることは叶わない。だが、震える顎から零れる吐息はいつも以上に甘ったるく、快楽を逃がすように必死に呼吸を繰り返す胸が上下する様はいつも以上にエロいと感じてしまう。ノアの行動に煽られ思わず質量を増した自分の性器。
「やぁっ……んっ、お……きっ…ぃ…!?」
 着ていたライアンのシャツを強く握り込んでノアがそう叫んだ。
「全部挿入ったな」
 伸ばした手は残念ながらノアの頬までは届かない。代わりに腰を撫でながらそう言うと、天井を向いていた顔がゆっくりとライアンの方へと向けられる。
「…ほん…と…?」
「ああ。綺麗に繋がってる、此処で」
 態とらしく指で撫でる結合部。その僅かな刺激でも感じてしまうのか、ノアが甘い吐息を零す。
「…あんたの…俺のなかに、ちゃんと…はいってる…?」
「挿入ってるよ。隙間がないくらいしっかりと」
 そう答えてやると少しだけ戸惑いを浮かべた後、嬉しそうに笑いながらノアが身体を倒した。軽く触れるキス。その直後に甘えるように頭を擦り寄せられる。
「アンタと繋がってる。すごくうれしい」
「……そうっ…だな…」
 一つ一つ今まで経験してきたセックスと比較してしまうのは多分、今以上にノアの事を好きになるための理由を探してしまうせいだろう。男を抱くのはノアが始めてなのに、付き合ってきたどの女よりも相性はよい。気持ちとしてもこれほど欲しいと求めることも珍しいと言える。これがノア以外の相手だったら、ぶん殴ってる所だ。もしかしたら余りの違和感と気持ち悪さに殺してしまっているかもしれない。なぜノアに対してはそうならないのかはライアンには判らない。だがそんな些細なことはどうでも良くなるほど、今の状況に溺れていたい。
「男に対して欲情する日が来るなんて思わなかった」
「…らい……あん…?」
 繋がったまま特に目立った動きを見せようとしないノアは、相変わらずライアンに凭れ掛かったまま甘え続けている。
「やばいな…やっぱり好きだ。堪んねぇっ」
 腕を広げ逃がさないと言うように強く抱き込みその感触を確かめライアンは苦しそうに表情を歪めた。女よりも筋張った身体。余り肉は付いてはいないが、それ程鍛えても居ないせいか酷く細くアンバランスで。抱き心地が良いとは決して言える訳ではない。それでも腕に伝わる感触が心地よいと思ってしまう。
「おれが…動こうか…?」
「え?」
 軽く身を捩りライアンの上から起き上がると、ノアは一度髪を掻き上げて乾いた唇を舌で湿らせた。
「いつもしてもらってるから、たまには…さ」
 このまま騎乗位のスタイルでセックスを続行するつもりらしい。膝を立てライアンの腹に手をつくと、ノアはゆっくりと腰を持ち上げる。中から抜け出ていくペニス。ある程度抜けたところで腕の力を抜き再び腰を落としより深く自分の中へとそれを埋めていく。もう一度。腕に力を込め腰を浮かして中から抜き、また腕の力を抜いて腰を落とす。そんな単純な動作を繰り返しながら口から喘ぎを零しノアは呼吸を速くしていく。
「っっ! …嘘だろ…おいっ…」
 セックス慣れしていないせいで非常に動きは拙いが、その不器用さがとても新鮮に映り感情はいつも以上に煽られた。生理的な涙が溢れ出しノアの頬を濡らす。薄く開いた唇から零れる音にライアンは目を見開きノアの腕を掴んだ。
「んっ……ぁっ」
「くそっ!」
 これ以上煽られると何をしてしまうか判らない。素早く上体を起こし起き上がると、ノアの背に腕を回してソファに押し倒す。
「え?」
 急に世界が回転した。視界に部屋の状態が映るわけではないため感覚としてしか判らなかったが、背中に伝わる柔らかな弾力から、自分の身体がソファの上に倒されたことだけは理解出来る。
「なんっ…で…?」
「選手交代な。俺がノアを抱きたいんだ。だからバトンタッチ」
 不安げに伸ばされた腕を掴み自分の首に回すと、軽く口付けた後足を抱え上げ腰を揺らす。
「あぁっ!」
 直ぐに余裕のない喘ぎがノアの口から溢れた。何時も与えられる強い刺激に瞼を開き涙を散らす。ノアの視線はライアンを捉えることはない。しかし、しっかりと回された腕に力が籠もり引き寄せられる身体と、咥え込んだ内側が離したくないと言うように締まりより奥へ呑み込もうと動き出す。取り戻した主導権。よりノアが感じてくれるようにと、ライアンはノアが善がるポイントを集中的に攻める。
 次第に余裕の無くなっていく息遣い。直ぐ近くで荒い呼吸が繰り返される。時々縋るような声で自分の名前を呼ばれ、その度にライアンは目の前に居るノアにキスを落とす。確かにこの行為によって何かは満たされるのだろう。だが、それと比例するように虚ろはより大きく形を変えていく。この刹那的な関係によって何が生まれるのかは判らない。それでももう後戻りを考える余裕はとっくに無くなってしまっている。より強く中を穿つと、それが更に奥へと入り込みノアは絶頂を迎えた。軽く震える身体を宥めるようにあやしながら、ライアンは数度腰を打ち付けノアの中へと自分の熱を放つ。いつも以上に酷い倦怠感。それでも今確かに自分の腕の中にノアという存在を感じられる事が嬉しい。
「……よか……た……?」
 まだ上手く呼吸が出来ないノアは、苦しそうに息を繰り返しながらライアンの頬に触れた。
「ああ。凄く満足出来た」
 その言葉は本当。額に、瞼に、鼻に頬に、そして口に。触れるだけのキスを繰り返しながらライアンは呟く。
「なら…よか……た」
 少しだけ恥ずかしそうにノアは呟きはにかんだ笑顔を浮かべた。
「お疲れ様、ノア」
「んっ」

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あきゅろす。
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