涼宮ナツキの策略 第83話 「俺たちは本当に1年後に行けるんですか?」 俺は疑いを探る探偵のように尋ねたが、長門先生は簡単にうなずいた。 「可能」 そして立ち上がると、隣の部屋へと続く襖を開けた。 「ここ」 畳敷きの和室だった。畳以外は何もなく、本当に何もない部屋なんだと納得し、俺はこんな客間に通されて何をすればいいんだ?もしかしてここにタイムマシンが隠されているのだろうか、などの疑問を感じていると、長門先生は押し入れから布団を取り出して敷き始めた。それも2組。 「まさかとは思いますが……ここで寝ろと言うんですか?」 長門先生は枕を持ったまま俺を振り返った。長門先生の瞳には俺と美春が映っている。 「そう」 「ここで美春と2人で、ですか?」 「そう」 横目で窺うと、美春は及び腰になって、ついでに真っ赤に顔を染めていた。しかし長門先生は構うことなく、 「寝て」 すごく単刀直入ですね。 「寝るだけ」 俺と美春はどちらからともなく顔を見合わせた。唯一の救いは俺がナツキの体にいることで、実のところあまりドキドキすることはなかった。美春はどうだか知らんがな。 ここは長門先生の言う通りにするしかない。寝ろと言うならそうさせてもらうさ。小さな頃は親に無理矢理ベッドに入れられて、寝るのが嫌で嫌で仕方なかったが、今となっては話は別だ。少しでも長く寝ておかないと、ナツキのテンションについていけなくなるからな。 長門先生は壁際の蛍光灯のスイッチに手をかけて、何か呟いた。おやすみではなかったような気がするが、考えている暇を与えずに電気が消えて、俺は仕方なく布団をかぶった。 [*前へ][次へ#] [戻る] |