涼宮ナツキの策略
第45話
「うーむ」
鞄の中を覗き込み、俺は今の惨状を考える。鞄の中には教科書もあるし、ノートや資料集もある。でも、一つ入っていないものがあった。
「何唸ってんの?」
ナツキが俺の顔を覗き込み、不思議そうに見つめる。まあ気持ちはわかる。俺が今どんな顔をしているのか自分でも分かるからな。
「いや、なんでもない」
としか言えない自分がなんだか虚しい。まさか、今日一番大切なものを鞄に入れるのを忘れていたなんて思ってもみなかったからな。
それから、午前中の授業は背中にメランコリーなオーラを身に纏い、先生たちの話を筒抜けにしていた。俺の朝の努力が無駄になってしまったからな。
だから、授業中ナツキがシャーペンで俺の背中を刺しても、定規で背中を叩いても、何も感じなかった。今となっては完全燃焼して真っ白い灰になって椅子にもたれかかったあのボクサーの気持ちが分かるような気がした。今まさに俺がそういう状態だからな。
そんな俺を嘲笑うかのごとく、午前中最後の授業のチャイムが鳴る。俺は自分の席に座ったまま固まっていた。
「どうしたの?昼ごはん食べに行かないの?」
俺の体を散々痛めつけたナツキの質問に俺は、
「ああ」
としか言えなかった。今はここを一歩も動きたくなかったからな。
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