涼宮ナツキの策略
エピローグW
「ふわ、あふっ」
慌ててスカートを押さえるのが長門さんで、
「うわー」
はしゃぐのが美春。反応のは違うが、どちらも同じ衣装を着ていて、それでいて似合っているのも同じだ。
白い縁取りをされた赤い服にぽんぽんのついた赤い帽子、丈の短い裾を恥ずかしいと思うのは長門さんで、可愛いと思うのは美春だろう。
どこから見ても完璧完全、一分の隙すら見つけることのできないサンタ姿である。
「可愛いなあ」
感想を述べたのは一樹先輩である。
「でしょ?」
1人制服のナツキが胸を張る。まぁ、似合わないと言えば嘘になるから俺は何も言わないが。
「何がいい?」
「何がだ?」
ナツキは鼻を鳴らして腕を組む。
「クリスマスよ。何がいい」
「だから何がだよ」
「もう、鈍いわね」
いや、お前が説明不足なんだよ。俺の反応が当たり前だ。
「クリスマスパーティー、何か料理作るから何がいいか聞いてんのよ」
ナツキはそっぽを向いて、ぼそぼそ何か言っている。ワケが分からず俺は一樹先輩にヘルプを求めるが、一樹先輩はノータッチだ。
「ちなみにクリスマスパーティーって何人でやるんだ?」
「あたしたち5人とそうね……朝倉や国木田くんとかかしらね」
そういえば朝倉にも呼ばれてたんだっけな。朝倉の方は断っておくことにしよう。ナツキに逆らうとあとが怖い。
「で、何がいいの?」
どうやら決定権は俺にあるようだ。ナツキの瞳が俺に向けられる。そんなに急に言われてもな。
「お前のサンタ姿」
なんて言ってみた。その途端ナツキは湯気が出る程顔を染め、
「ば、バカ!ふざけないでちゃんと答えなさい」
と、俺はナツキのお叱りをいただいた。冗談のつもりがとんだ誤解を招いてしまったようだ。
結局無難に鍋料理と言うことになり、ナツキはまだ作ってもいないのに小学生料理人のように自信満々の様子で、それから数日の間であれこれと調達して、部室にはらしからぬ備品が増えていった。
そんな冬のひとときを俺はまたしみじみと楽しんでいた。
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