ぽかぽか夢心地(ばぁなぁさんのリク)
10万HIT記念 キョン&ハルヒ
春──
おひさまがぽかぽかとあたたかいから、きもちよくってすぐに眠ってしまうけれど……
気がつくとあたしは桜の木の下にいた。そして、何か柔らかいものの上で眠っていたみたい。
「よう。起きたか?」
男の人の声がする。あたしは小さくあくびをして、寝起きであまり開かない目を擦りつつ、上を見上げた。
「勝手にひざに乗って眠っちまうなんて、図々しいにも程があるぞ」
あ、あれ?キョン?何でここにいんの?って、あたしキョンのひざの上で眠ってたの?
あたしは目を見開いてまじまじと声の主を見る。やっぱりキョンで間違いない。あたしは慌ててキョンのひざから飛び降りた。
「あ、もう行くのか?」
と、頭の上に手が置かれる。あたしはその大きな手で進路を奪われ、逃げるに逃げられなくなってしまった。
「どこのネコか知らないが、もう少しゆっくりしていかないか?」
そこであたしはようやく気がついた。頭の上にある耳、おしりからしゅるりと生えたしっぽ、でもなぜかぶかぶかのワイシャツを着ていた。どこからどう見てもあたしの体はネコに間違いなかった。
「やっぱりネコはいいもんだな」
キョンの手が頭からあごに回る。キョンの温かい手が気持ちよくて、あたしは思わず「にゃーん」と甘声で鳴いてしまった。
……そっか。あたし夢を見てるんだ。そうだ、そうに違いない。
「お、おい。くすぐったいって」
キョンの肩に乗せられたあたしは、キョンの頬をぺろぺろとなめた。するとキョンはくすくす笑って、またあたしの頭をなでてくれた。
「お前、甘えん坊だな」
キョンは慣れた手つきであたしのいろんなところをなでる。キョンの温かい手があたしの体に触れられるたび、気持ちいいのにもかかわらず、あたしの心臓は暴走して今にも破裂しそうになっていた。
「それにしても、眠いな」
キョンは大きなあくびを一つすると、あたしの体を腕に乗せ、桜の木にもたれて瞳を閉じた。
なんだかあたし、この夢なら、この姿なら、素直になれそうな気がした。春の暖かい風が吹き抜けて、あたしの眠気も誘う。
キョンの腕で眠れるなんて、たとえ夢の中でも嬉しい。悪戯な神様が見せる春の夢。この夢が現実でも続けばいい。なんて考えるあたしはよくばりなのでしょうか──
「……ルヒ」
遠くで誰かの声が聞こえる。
「……ハルヒ」
その優しい声であたしは起こされて、寝起きの目を擦る。すると目の前にキョンの姿があった。あれ?これも夢なの?
「寝ぼけてんのか?」
キョンがあたしの頬をつねる。その痛みであたしの眠気は一気にすっ飛んでしまった。
「痛いわね、何すんのよ!」
鈍い痛みが走る頬をなでながら、あたしはキョンの顔をにらみつけた。すると、キョンはくすりと笑い、
「よだれを拭けよ」
と言われ、あたしは慌てて口元を手で擦った。
「何であんたがここにいんのよ!」
「お前が俺をこの部に強制入部させたんじゃないのか?」
辺りを見回すと、そこは間違いなくSOS団部室だった。ただ、そこにいるのはキョンだけで、部室の中は夕暮れでオレンジ色に染まっていた。
「気持ちよさそうに寝てたが、どんな夢を見てたんだ?」
キョンのその言葉を聞くと、あたしの中から何かこみ上げてきて、なぜか体がほてってきた。
もちろん、あたしはキョンの質問に答えることは出来るはずがなかった。
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