涼宮ナツキの退屈 第三話 「わっとっとと」 もともと運動神経の悪くはない二人だったから、俺はほとんど教えることもなかった。 「やった! 捕れたよキョウくん!」 「うん、うまいうまい」 なんでかな、こいつの相手をするとお守りになってしまう。喜ぶ美春を適当に褒めて、俺はナツキの方を向いた。 「あいつ……また」 ナツキは一樹先輩に向けて弾丸ライナーを打ち放っていた。 「ちょ、涼宮さん」 「うるさいうるさいうるさい。黙ってボールを見てなさい」 「やめてやれよナツキ。一樹先輩がかわいそうだ」 俺は一樹先輩の横に立って一緒になって地獄ノックを受ける。へえ、いい打球じゃないか。と、思っていると、ナツキのバットが止まった。 「どうしたんだナツキ?」 「ノ、ノックはこれくらいでいいわ」 ナツキはバットを下ろした。 「ふう……助かったよキョウくん」 一樹先輩は息を切らして地面にへたれこんでしまった。まああんな打球を何百球も受けてたら仕方ないな。 「今日はこのくらいでいいわ。じゃあ解散」 ナツキはそう言って帰ってしまった。やれやれ、こんなんでいいんだろうか。 [*前へ][次へ#] [戻る] |