涼宮ナツキの退屈 第一話 「没ね」 ナツキがにべもなく言ってのけると原稿をつき返す。 「だめですか?ものすごく考えたんですけど」 長門さんは悲鳴に似た声を上げる。 「うん、全然ダメ。何かこうパーッとしないのよ。ドカーンて言うインパクトが足りないわ」 「インパクトですか?でも童話にそんなものがいるんですか?」 「とにかくこれは没。新しいの考えておいて」 「はい」 長門さんが力なく答えると、今ごみと言われてしまった原稿をみかんの箱の中に入れた。箱の中には今まで没になった紙も入っていて山になっている。 ふと目を机の隅に転じてみる。メイド服の美春が慣れない手つきでノートパソコンのキーボードを叩いていた。一樹先輩は頭を掻きながら片手で文章を打っている。 そういう俺は目の前のノートパソコンとにらめっこをしていた。真っ白い画面にはカーソルだけが点滅している。 「キョウ、手が止まってるわよ?」 上機嫌なのはナツキだけで、他のみんなはノートパソコンの前でうなっていた。 俺の目線はパソコンの画面からナツキの腕にはまっている腕章に向かった。 いつもは団長、この間は名探偵。そして今はまっている腕章には「編集長」とでかでかと書いていた。 [次へ#] [戻る] |