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涼宮ナツキの退屈
第十二話
長門さんの作ってくれたスコーンは瞬く間もなく俺と美春の胃袋の中に収まって、バスケットの中はきれいさっぱりなくなってしまった。

「ご馳走様でした。おいしかったです」

紅茶を飲み干してティーカップを置き、俺は長門さんにお礼を言った。すると長門さんは微笑んで、

「お口に合いましたか?」

「ええ、とっても」

「よかったです」

長門さんはふぅと息をはいて安心したように肩を落とした。長門さんの作ったものですから残すわけにはいきませんよ。男として。

「キョウくんバクバク食べてたもんね。おいしくないわけないよ」

「お前もだろ?」

美春は狙ったものは逃さない鷹みたいだったからな。俺の食べる分を死守するだけで精一杯だった。

「ふふ、ほんとに仲がいいですね」

ティーカップとバスケットを片付けてきた長門さんがエプロンを外しながら言った。

「こいつより長門さんみたいな人と幼馴染でありたかったですよ」

俺はやれやれと溜め息をつく。

「キョウくん、それはひどくない?」

美春は俺に飛び込んで押し倒す。腕を首に回し一気に絞める。

「おいやめろって!苦しいだろが!」

「ダメだよ、乙女の心を傷つけた罰だからね」

誰が乙女だ。乙女ならこんなことしないだろうが!やばい、マジで苦しくなってきた。し、死んじまう。

「あの、あんまり暴れないでくださいね。近所迷惑になりますから」

それが俺にとって鶴の一声になった。美春の腕が離れて新鮮な空気が体いっぱいに流れる。ま、マジで死んだと思った。

「あ、ありがとうございます」

「いえいえ」

何か借りを作ったみたいだな。

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