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涼宮ナツキの退屈
第十一話
高級マンションの一角、長門さんの部屋は前よりかわいらしいお部屋になっていた。さすがに二度目となると俺の心臓も多少は制御されているが、まあ分かるだろ?慣れないものは慣れないんだ。

「おっじゃましまーす!」

「お、お邪魔します」

「はい、どうぞ。ゆっくりしてってください」

長門さんが俺と美春を招き入れると、美春は大きなくまのぬいぐるみを見つけ抱きついた。

「わー、このくまさんふかふかだね」

「でしょ?私のお気に入りなんですよ」

長門さんも美春に倣ってくまのぬいぐるみを触っている。俺は少しくまが羨ましかった。まあ、お前にあたっても仕方ないけどな。でもちょっとでいいから代わってくれないか?

「じゃあ、少し待っててくださいね」

「ふぁーい」

くまに顔をうずめて美春は手を上げて答えた。俺は軽く会釈をして、テーブルの前に座った。と言っても落ち着いてるわけじゃない。頭の中では素数を数えてるしな。

しばらくして長門さんが制服にエプロン姿でキッチンから出てきた。

「すみません、お待たせしました」

「亜紀ちゃんそのエプロンかわいー」

美春の言うとおり長門さんのエプロン姿はかわいかった。部室のメイドとは少し違う顔だな。

「あ、ありがとうございます」

長門さんは頬を染めながらトレーをテーブルの上に置いて、紅茶の入ったカップを俺と美春の前に置く。

「どうぞ。もう少しでスコーンも焼けますからね」

そう言うとトレーを胸のあたりに抱えて足早にキッチンに戻っていった。

「いい香りだね、キョウくん」

「え、ああ」

俺はカップを持って一口飲む。香りが口の中に広がっる。ん?何かラベンダーのような香りが漂っているんだが。

「プリンス・オブ・ウェールズって言うお茶なんです」

長門さんはスコーンを入れた小さいバスケットを持って戻ってきた。

「スコーンとの相性がすごくいいお茶なんです。一緒に食べてみてください」

それじゃあと一つ取ろうとすると、俺が取ろうとしていたのを美春が鷹がえさを獲るようなすばやさで奪った。

「あっ!てめえ盗りやがったな」

「早い者勝ちだよー」

やばいな、こいつ食べ物を前にしたら目つきが変わるんだよな。

「い、いっぱいありますから」

という長門さんの言葉は俺と美春の耳には届かなかった。

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あきゅろす。
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