涼宮ナツキの退屈
第九話
結局原稿は進まずじまいで、今日も追加の宿題を持って家に帰ることにした。俺は原稿用紙を入れるために鞄を開けてクリアファイルを取り出すと、数学の問題集を忘れていることに気がついた。今日確か宿題が出てたな。帰る前に取りに行こう。
「いい?明日進んでなかったら死刑だからね!」
帰り際、ナツキは俺にそう言った。てかお前、人を指差すなよ。
「分かってるよ」
俺は下駄箱に向かうナツキと長門さんと別れて、自分の教室に向かった。陽の傾いた空は教室の中も同じ色に染まる。まあいいや、問題集はどこだっけ?
「あっ、キョウくん!」
教室の外から声が聞こえた。
「補習、終わったのか?」
「うん。もうくたくた」
美春はそう言って肩を落とす。
「そっか、じゃあ何か食いに行くか?俺も原稿でくたくたなんだ」
「うん、行くー!」
美春はさっきの表情が嘘みたいに笑顔になった。
「じゃあ、少し寄り道していくか」
「うん!」
美春はスキップで下駄箱まで向かった。こいつ、どんだけ子供なんだよ。
「あっ、亜紀ちゃん!」
美春は大きく手を振りながら下駄箱で靴を取り出していた長門さんの方へ向かう。
「どうしたんですか?先に帰ってたんじゃ……」
「部室の鍵を返しに言ってたんです。ちょうど涼宮先生にも用事がありましたし」
「亜紀ちゃんも何か食べに行かない?キョウくんが奢ってくれるらしいし」
「こら、俺はそんなこと言ってねえよ!」
こいつ油断もすきもあったもんじゃねえ。今聞かなかったらマジで奢りになっていたかも知れねえ。危ない危ない。
「それならうちに来ませんか?ちょうどおいしい紅茶が手に入ったんですよ」
「いいんですか?」
「ええ、大歓迎です」
「わーい、いくいく!」
と言うことで、俺と美春は長門さんのお宅に招待されることになった。て言うか美春、お前ほんとに遠慮ねえな。
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