涼宮ナツキの退屈
第七話
放課後のSOS団部室には今、俺しかいない。長門さんは資料探し、美春は補習、一樹先輩はサッカーで、ナツキはどこに行ったか知らんがろくな事はしてないだろう。というわけで、シーンとした部屋に一人少しだけ文字の打たれたノートパソコンはまた仕事もせずにカーソルだけが点滅していた。いや、仕事をしてないのは俺のほうか。
ネタの浮かばない小説家はただすることもなく、部室の窓から練習をしている運動部の様子を眺めていた。運動部はもう世代交代していて、今は2年生が主力メンバーになっているのは不思議な感じがする。一回り小さい2年生が1年後どこまで成績を伸ばせるか楽しみである。
ちなみに、一樹先輩とある意味俺が掛け持ちしているサッカー部は県大会で3回戦まで出場したが、もちろんその上の全国大会に駒を進めることがなかった。今は一樹先輩がキャプテンになってチームを引っ張っているらしい。とは言っても練習前には必ずSOS団部室に顔を出している。律儀なこった。
俺がノートパソコンの前に戻ると、ドアがノックされた。
「開いてますよ」
「すみません、両手がふさがっているんで開けてくれませんか?」
この声は長門さんか。またたくさん本を持ってきたんだろうな。俺は立ち上がってドアを開くと、自分の顔が隠れそうなほど大量の本を持っていた。
「ありがとうございます」
「大丈夫ですか?」
俺は何冊か持って机の上におく。
「ちょっと重たかったけど平気です」
長門さんが残りの本を机の上に置くと、ふぅと息をはいた。
「またたくさん借りてきたんですね」
俺は一番上の絵本を開くと、かわいらしいイラストが描かれていた。こういうの読むのは幼稚園以来かな?
「ええ、なかなか思うようなものが書けないので」
長門さんは苦笑しながらお茶を差し出した。
「あ、すみません」
「キョウくんの方はどうですか?」
「さっぱりですね。ナツキにマジで死刑にされるかもしれませんね」
俺は冗談交じりで笑ってみせる。長門さんは心配してくれているのか、
「何か手伝いましょうか?」
「いや悪いですよ。長門さんも忙しいんでしょうし」
「大丈夫ですよ」
長門さんは俺のほうに回ってきて、カーソルが点滅しているだけのノートパソコンをのぞく。
「あれ?結構進んでるじゃないですか。読んでいいですか?」
「ダメですよ」
ナツキには平気で見せられたんだが、長門さんとなれば話は違う。こんなの恥ずかしすぎて見せられない。
「いいじゃないですか。見せてくださいよ」
長門さん、胸、胸っ!
「だ、ダメです。見せられません!」
俺は必死にノートパソコンを死守していると、
「なーにしてるの?」
ナツキが部室に入ってきた。
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