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涼宮ナツキの退屈
第十話
それからしばらくはあたしも少しずつだけど言葉を覚えてお姉ちゃんと話すことが楽しくなっていた。今ではお姉ちゃんとうさぎのぬいぐるみがあたしのお友達。

そんなある日事件が起きた。

その日もいつもの通りお姉ちゃんがやって来た。でも、少し様子が違っていた。

「こんにちは」

「こんに……ちは」

話せるようになったとはいえ、まだまだぎこちない。お姉ちゃんみたくうまく話せるようになるのが今のあたしの目標。

「今日は何の話をしようか?」

最近お姉ちゃんはご本を読んでくれる。昨日はかぐや姫、その前は桃太郎。あたしはお姉ちゃんのひざに乗りお姉ちゃんの声を聞くのが大好きだ。

「じゃあ、これにしようか」

そう言って取り出したのは、あ・か・ず・きん……赤ずきん。あたしはいつものようにお姉ちゃんのひざの上に乗り、これから始まるお話にどきどきわくわくしていた。

「赤ずきん……」

お姉ちゃんが読み始めた。あたしはめくられるページに集中する。めくられるページに描かれるイラストがかわいらしく動く様子が頭の中で描かれる。お姉ちゃんの声でそのキャラクターが話しているように感じる。お姉ちゃんがご本を読んでいるときのあたしは異世界への旅人さん。だけどその時間はあっという間に過ぎていって、お姉ちゃんが本を閉じると元の世界に帰ってくる不思議な感じは、少し悲しい。

「おしまい」

今日もまたひとときの不思議な旅を終えて元の世界に帰ってきた。そのときのお姉ちゃんの顔はいつもの優しい笑顔じゃなくて、少し寂しそうな顔だった。

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あきゅろす。
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