涼宮ナツキの退屈
第八話
あたしの親は両方とも小さいときに死んじゃって、あたしは昔から一人ぼっちだった。寂しかったけど泣いても仕方のないことだし、あの頃のあたしは心を閉ざしてただ時間がたつのを感じているだけだった。例えてみるならお人形、人間の形であっても心がないあの頃のあたしはお人形と何ら代わりはなかった。
「こんにちは」
そんなある日、あたしの前に一人の女性が現れた。その時のあたしはただのお人形、口を開くことできないあたしは話すことなんてできるわけがなかった。
「あなたの名前はなんて言うのかな?」
その女性は笑顔で話しかけてくる。今のあたしはなんて顔をしているのか分かるはずもない。
「おなか空いてない?お菓子を持ってきたんだ。一緒に食べない?」
女性があたしの口の中に赤い球を入れてくれた。おいしい。あたしの口の中で甘い味が広がる。今までこんな食べ物食べたことがない。
「おいしい?」
女性がまたあたしの顔を笑顔で覗き込む。
「そっか。よかった」
あたしの気持ちがこの女性には分かっているんだろうか?不思議な人だ。
「また来るね」
そう言って女性は去っていった。そしてその女性は次の日もまた次の日もあたしの元へやって来て、飴玉をくれた。そして、いろいろ話してくれた。でも、あたしは聞くだけで話すことはなかった。
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