涼宮ナツキの退屈
第七話
美春の家の前はやけにシーンとしていた。ただでさえいつも陽気な笑い声をあげている家なのに、ここまで静かだと気味が悪い。
「おーい美春、入るぞ?」
「え、キョウくん?ふわわっ!」
ドスンという音が台所の方から聞こえた。急いで行ってみると、椅子から転落してしりもちをついた美春の姿があった。
「何やってんだお前」
「えへへ、ちょっとおなかが空いちゃって」
「えへへ、じゃねえよ!おとなしく寝てなさい」
「はーい」
何だ、元気じゃないか。心配して損した。
美春を布団の中に入れて俺は椅子を引っ張り出して座る。美春はふてくされて布団にもぐる。
「ほれ。買って来てやったぞ食いもん」
「え?食べ物?」
美春は目をキラキラさせて俺を見つめる。こいつ食いもんには弱いからな。
「食うか?りんご」
「そのままじゃ食べられないよ」
「じゃあバナナはどうだ?」
「うん、それでいい」
美春はバナナの皮をむき、ほおばる。俺は椅子でくるりと回りながら部屋を見渡す。そういやこいつに貸してたDVDがあったっけな。
「そういやさ美春」
「ふぇ?なーにー?」
「とりあえず食ってから話せ。汚いから」
美春はさっきまでまるまるあったバナナを超スピードで飲み込み、
「で、なに?」
「なんでこの家でみくるさんと一緒なんだ?」
「キョウくんはいつも唐突にものを聞くね」
美春は苦笑した後、大きく息を吐いて語り始めた。
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