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涼宮ナツキの退屈
第六話
曇り空とは言えども夏休み真っ盛りというのは間違いなく、帰り道に通りがかる小さな公園にはたくさんの子供が群がっていた。あの中に美春がいるんじゃないのだろうか?

俺は一人ハイキングコースを下って自転車の置いてある駐輪場へ急いだ。俺の着ているカッターシャツは汗でぐっしょり濡れていたからな。とっとと帰って着替えたい。だが、俺は今日は寄り道せざるを得なかった。

「こんちは」

俺はひいきにしている商店街の中の小瀧青果店に顔を出した。ここの主人の健二兄さんは小さい頃からの顔なじみで、俺が小さいときはよく遊んでもらった。そのためかよくサービスをしてくれる。いや、豪快な性格だしサービスは誰にでもしょっちゅうしているんだろうが……

「おうボウズ。珍しいな、おつかいか?」

「しょっちゅう来てるじゃないですか。あ、ここの果物500円くらいで適当に詰めてくれませんか?」

「何だ?お見舞いか」

「ええ、美春が風邪引いたらしくて」

「朝比奈の嬢ちゃんがかい。珍しいこともあったもんだ」

「今日は雨かもしれませんね」

「そうなったら今日は店じまいだな」

健二兄さんは豪快に笑ってそう言った。まあ雨だから売上に関係はするんだろうが。

「じゃあこれで500円な」

「こんなにいいんですか?」

「朝比奈の嬢ちゃんには元気になってほしいからな。おい涼、見舞い用に詰めてくれないか」

「はいはい。あらキョウくんいらっしゃい」

「ご無沙汰してます涼さん」

佐倉涼さん、ここでバイトをしている大学生だ。バイトを雇ったことがない健二兄さんがこの人だけをバイトとして雇っているのは何か理由があるのだろうが、健二兄さんは全く話してはくれない。

「今日は北高の登校日でしたっけ?」

涼さんはリボンとかごを取り出して、慣れた手つきでラッピングを始めた。

「ああ、だから律儀に制服着てきたのか」

「それ以外にこんな真夏に学校になんて行く理由なんてありませんよ」

「お前はめんどくさがりだからな」

さすが健二兄さん、よく分かっていらっしゃる。

「はい、できましたよ。美春ちゃんによろしくね」

「ええ、言っておきますよ」

俺は涼さんに500円を手渡して、綺麗にラッピングされた果物かごを自転車のかごに丁寧に入れて自転車にまたがった。

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