涼宮ナツキの退屈
第九話
クルーザーは風を切り、海は青く輝いている。吹き抜ける潮風が頬に当たり気持ちがいい。
「それで、その島は何て言うんですか?」
「と、言うと?」
「霧咲島とか、神隠し島とか、そんな感じの名前がついているんでしょう?」
「特についていませんね」
「じゃあ、何か伝説とか、事件とかがあったりする?」
「特にはないですね。元々無人島でしたから」
「じゃあこれから起こるかもしれないんですね」
「そうなのかもしれませんね」
ナツキの質問を適当に返事している校長は、ハンドルを握ってクルーザーを操縦している。こんな会話を出発と同時にしてるんだから、誰だってウザったくなるだろう。エンジン音と波切音に混じって聞こえてくる話を小耳に挟んだところ、どうもナツキは過剰な期待を孤島の館に持っているようだ。それにしても、なんでまたいちいち怪奇性を求めるのだろうか。泳いで飯食って適当に遊んで友好を深めたところで気持ちよく帰途につく、ってな感じで十分だろうに。
「あっ、見えてきた!」
目の前には一つの島が見え始めていた。
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