涼宮ナツキの憂鬱
第八話
今までで一番長い昼飯前の授業がようやく終わりを告げた。男子全員と涼宮ナツキから睨みつけられ、女子どもはひそひそ話で俺のことを話していたみたいだからな。これほどまでに辛く苦しい授業はなかった。
「つーか、お前の母さんってかなり若いな。何歳だ?」
えーと、大学卒業してすぐに俺が産まれたらしいから38だっけな。
「若けえな!羨ましすぎる」
「ホントにねえ」
別にひとりで飯食うのには苦にならないものの、やはり皆ががやがや言いながら机をくつっつけといるところにポツンと取り残されといるのもアレなので、というわけでもないのだが、昼休みになると俺は中学が同じで比較的仲のよかった国木田と、たまたま席が近かった谷口と言うやつと机を同じくすることにしていた。
「お前の母さん高校生にしか見えないぜ。うちの制服着てみても違和感ないぜ」
うちの母さんをコスプレイヤーに勝手にすんな。
「そういやお前、涼宮に話しかけてたな」
何気にそんなことを言い出す谷口。まあ、うなずいておこう。
「ワケのわからんこといわれて追い返されたろ」
その通りだ。
「もしあいつに気があるなら、悪いことは言わん、やめとけ」
何か知ったような口だな。
「あいつの奇人ぶりは常軌を逸してる。あの自己紹介でわからなかったか?」
「あの宇宙人がどうとかいうやつ?」
卵焼きの中のほうれん草を箸で取り除きながら国木田が口を挟む。
「そ。中学時代からあんな感じだ。お前らあれ知ってるか?たんざくが沢山かかった笹が校門に並んでたヤツ」
知らん。
「確か新聞の地方欄に載ってなかったっけ?」
国木田がそう言うならあったんだろうな。
「ワケわかんないよな」
「僕は夢があっていいと思うけど?」
「いや中学生だとさすがに引くだろ」
まあ一里あるけどな。
「たんざくには何が書いてあったの?」
「確か宇宙人とかがなんとか書いてたのと、ナスカの地上絵みたいなヤツが描いてあったな」
なんじゃそりゃ。
「なんでそんなことしたんだ?」
「知らん」
あっさり答えて谷口は白飯をもしゃもしゃ頬張った。
「他にも色々やってたな、例えば……」
くだらなそうな話なので、俺は耳を傾けず弁当を食う作業に集中することにした。
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