涼宮ナツキの憂鬱 第二十五話 「大丈夫かよ」 一応女の子なんだし男に勝てるわけないと思って心配してやってんのだが、ナツキそんなのお構い無しで、 「あたしが負けると思ってるの?」 そんなにやる気で満ちてる顔を見ると、間違いでも負ける気はしねーよ。 「よろしい」 満足気な顔でナツキはうなずく。まあ俺はあんな人入っても入ってくれなくてもいいと思ってるからどーでもいいんだがな。 昼の授業中ナツキは意気揚々で、鼻唄なんかも歌っていた。ホント余裕だなぁ。 てなわけで放課後っ。 「なかなか様になってるじゃない」 「一応エースストライカーでね」 「やりがいがありそうだわ」 「かかっておいで」 二人は全て言い切った顔をして、お互いを見つめあっていた。観客席も満席で、サポーターの方もやる気マンマンだ。やれやれ、とっとと終わってくれないもんかね。 試合が始まった。まずはナツキの攻撃……女とは思えない身のこなしでフェイントをかけるが、相手には効かない。逆にナツキの体力を無駄にしている感じだ。大丈夫かよホントに。 必死にボールを操るが、あっさり捕られて攻撃終了。ナツキはほとんどなす術(すべ)がなかった。 攻守交代。今度は古泉一樹の攻撃。 エースストライカーだから一直線に突破かと思いきや、子技の連続でナツキをかわす。まるでボールと足に糸がつながっているように操っていた。もちろんナツキはあっさり抜かれ、そのままシュート。古泉一樹の勝ち。はじめからわかっていたことだ。 「大口叩いたわりにはあっさりだったね」 ナツキには言葉なかった。 「じゃあ俺は練習に戻るから」 ナツキはうつ向いて動かなくなった。しゃーない、やってやろうじゃないか。 「古泉先輩、俺とも一勝負しませんか?」 「君はあの子の……」 「部下1です」 「やってもいいけど、団長様に勝った俺に勝てるでも思ってるのかな?」 「負ける気はさらさらないですよ」 一応なれない敬語を使っているが、皮肉を言ってみる。これに相手が食いついて、 「ふん、その心意気は気に入った。やってやろうじゃないか」 「おてやわらかに」 俺はふとナツキのほうを振り向くと、ナツキは顔をあげて俺を見ていた。 [前へ*][次へ#] [戻る] |