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涼宮ナツキの憂鬱
第二十八話
「なあ!」

ブスッとした顔で歩くナツキを追って帰る帰り道、俺は何気なく聞いた。

「新部員が入ったんだ。少しくらい喜べよ」

「何よ。余計な事しなくてもあたしの力でどうとでもできたのに」

「ほぉ。俺のした事は余計な事か」

「そんなこと言ってないわよ!」

ナツキは声を張り上げて言った。

「うるせえな。もう少しボリュームとボルテージを下げろ」

「ごめん」

今度は一気にしょんぼりした顔に変わった。ただ素直に謝るナツキの行動に俺は驚いた。

「で、次は誰をさらうつもりだ?」

「さらってなんかないわ。任意同行よ」

いや、100%誘拐だぞ。他の部からパクってきたんだからな。

「それが見つからないのよ。どこかにいい子いないかしらね」

また拐う気かよ、こりないなコイツも。まあこうでなきゃコイツらしくない感じもするがな。

「あんたも探してよ。場合によるけど団員にするかもしれないから」

お前の気に入るようなやつが俺の周りにいないような気もするがな。

「まあ考えとくよ」

「絶対あたしの気に入るような人を見つけなさいよ!」

「はいはい」

「はいは一回でいいの」

ただ俺はナツキと過ごす日常が楽しかったのかもしれない。普通の日常とは少しかけ離れてるがな。

「じゃあ、あたしこっちだから」

「そうか、じゃあな」

坂道を降りて、俺たちはそれぞれの帰路を辿ろうとした。ただ別れ際に、

「今日はありがと」

と言って走って帰っていったナツキの頬を赤らめて微笑を浮かべた顔は、俺がしばらくその場に立ち尽くすほど可愛かった。

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