涼宮ナツキの憂鬱
第六十話
「あの、長門さん?どこに行くんですか?」
ツインテールの髪が揺れて長門さんは振り返った。
「あの……私のお家です」
「え?」
あ、あのそれはマジですか?
美春以外の女の子の家には行ったことのない俺は、長門さんの言葉に固まってしまった。
俺はツインテールの髪をぴょこぴょこ揺らす長門さんの後ろ姿を見ながら歩いていた。
「あの、長門さんの家じゃないといけないんですか?」
さすがに知り合って間もない女の子の家にはいけないだろうと判断した俺の脳に従って俺はたずねた。
「誰にも聞かれたくないんです」
えーと、どういう意味なんだろう?
「ここです」
長門さんの言葉の意味を考えているうちに家に着いたみたいだ。
「あ、あのお邪魔していいんですか?親とかいるんじゃ……」
「大丈夫です。私一人しか住んでませんから」
えーと、そのなんだ、落ち着け俺の理性!
長門さんの家はかなりの高級なマンションの一室だった。
「ささ、どうぞ入ってください」
「お、お邪魔します」
俺の心臓は制御機能を失い、さっきからもう暴走気味だ。
「えっと、その、なんでここに?」
俺はもうたわいもない世間話もする余裕もなくなっていた。
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