涼宮ナツキの憂鬱 第五十六話 「ほら」 ナツキが取り出したのは小さな弁当だった。 「ほらって……お前の昼飯は?」 「購買でパン買ってきたからこれでいいの」 「俺がそっち食うよ」 さすがにナツキの弁当はヤバいだろ。 「何?不満でもあんの」 「無いけどさ」 「だったらさっさと食べなさいよ。一応あたしが作ってるんだから」 え、マジで? 「でも、いいのか?」 「いいからほらとっとと食べる!」 「むぐ……」 俺の口に黄色い何かが詰め込まれた。これは卵焼きか? 「ど、どぉ?」 どぉって言われてもそりゃあ、 「う、うまい」 と言うしかないという驚くべきおいしさだった。 「遠慮しないで早く食べちゃいなさいよ」 ナツキにはしを持たせたら俺は落ち着いて昼飯にありつけないし、俺の心臓はさっきからオーバーヒート気味だ。 「いいからはしを貸せ、落ち着いて食えやしねえ」 ナツキはそのことに気づいたのかりんごより赤い顔をして、俺にはしを渡した。 [前へ*][次へ#] [戻る] |