涼宮ナツキの憂鬱
第二十六話
まずは古泉一樹の攻撃。
ナツキの時のプレーを見ていたから動きの良さは知っていたのだが、さすがにこれは速いな。ついて行くのがやっとだ。しかしさすがにエースストライカーでも、一瞬でも隙を見せるはずだ。その一瞬に賭けてみよう。
一樹はインステップ、インサイドとリフティングをしながら俺の様子をうかがう。時折フェイントを見せるが、ボールに集中している俺には意味がない。
「なかなかやるね」
「それほどでもっ」
お互いを見つめニッと笑った瞬間、一樹は俺をかわしダッシュした。
「やべっ……」
すかさず俺も追い掛ける。はっきり言うとギリギリだ。追い付いたところでシュートを防ぐ術がない。
考えるまでもない。シュートさせなければいいんだ。ならこれしかないだろう。
「どおうりゃぁぁぁぁ」
わけの分からんことを叫びながら俺は決死のスライディングをした。はっきり言うともうこれしか手がないと思っていたから、どう滑ったかもわからないし、ただこけただけなのかもしれない。それでも俺はこの選択肢を選び、そして賭けた。結果はどうであれ俺は後悔だけは残したくはない。
周りは砂けむりがたちこめて、しばらく何が起こっているのかわからなかった。
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