涼宮ナツキの憂鬱 第二十一話 女の子と一緒に登校というと、ハタから見れば恋人の様な関係に見えるかもしれないが、俺と並んで歩いているのは恋人ではなく変人であるからして、全然楽しくないのだが、 「ちょっと聞いてんの?」 涼宮ナツキの名前は学校じゅうに浸透しているもんだから、ハイキングコースを登る生徒の注目を買うものだと思っていたが、まだ朝が早くハイキングコースを登る生徒はほとんどいないことが幸いであった。 「なんだって?」 「ちゃんと聞きなさいよ!団員でしょ」 「へいへい」 とっとと教室の机で今日損した分の睡眠時間を確保したいという、俺のささやかな願いは叶わぬことになる。 「あたしが団員集めるから、あんたは書類をどうにかしなさい」 二人しかいない教室でナツキが大声で喋るもんだから、ナツキの声はいつも以上に教室の中が響く。これ以上の安眠妨害はこの世にないだろう。続々と入ってくるクラスメート達に丸い目をされて注目を買っている。やめてくれ。お前らの想像している関係じゃない。 「でさ、あんたどう思う?」 今日のHR前の他愛もない雑談は、いつもより少し長く楽しいものでもあったのだが、周りの視線が痛い苦痛なものでもあった。 [前へ*][次へ#] [戻る] |