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涼宮ナツキの憂鬱
第一二一話
坂を一気に駆け上がる。こんなに走ったのはいつ以来だろうか? 俺は息を切らして夕日を見た。そこには一つの長い影とともに、人の姿があった。

どうやら俺は当たりくじを引いたらしい。間違いない、そこにいたのは……


涼宮ナツキ。
やっと──見つけた。


「おい」

「なによ?」

少し懐かしい声がする。俺はこの声が聞きたかったんだよ。俺はなぜか微笑してしまう。

「何笑ってんの、気持ち悪い」

「会いたかったんだよ、お前に」

つい本音が出てしまった。なんつー台詞をはいてんだ俺は。

「あたしも……」

恥じらいを見せるナツキもなかなか絵になるものだな。

「あっ、そうだ」

俺はポケットに手を突っ込む。シンデレラにガラスの靴を返さなければならないからな。

「これ、返すの忘れてたんだよ」

ナツキはおずおずと前に出て、ハンカチを受け取った。

なんでだろう、会いたいと思っていたのについ会うとなると何を話せばいいのかわからない。

「また、ハッシュドポテト作ってくれよ」

「うん、いいよ」

「いいのか?」

「別にいいわよ。お弁当なんか一つ作るのも二つ作るのも同じようなものだから」

「やっぱり、そっちの方がかわいいぞ」

「バカ」

ナツキはますます顔を赤くした。反則的にかわいい。やっぱ言わなきゃならないんだろうか?

「あのさ」

「何よ?」

言うとなるとなかなか言えない。でもな、言わないと答えにならないんだよな。

「あのさ、俺とさ……」

その時俺の体は不意に無重力下に置かれ、反転し、左半身を嫌と言うほどの衝撃が襲って、いくらなんでも払い腰はないだろうと思いながら上体を起こして目を開き、見慣れた天井を目にして固まった。

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あきゅろす。
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