涼宮ナツキの憂鬱
第一二〇話
あの野郎どこにいやがる。かくれんぼなら終わりだと言っただろう?いいかげん出てこいよ。
一度ナツキの家に行ったことがあったが、ナツキの家はなくなっていた。でも俺はナツキがいなくなったとは思わなかった。なぜなら、いなくなった人間が俺に願望なんて訴えないだろう?しかも俺に会いたがってんだ。なら会いに行かないわけにはいかないだろう?
でもどこにいるんだろう。学校にいない、家にいないとなると、どこに隠れていやがるんだ。
日はだいぶ沈み、空は紅く染まっている。
「はぁ」
俺は公園のベンチに座り込み溜息をついていた。また行き詰ってしまい解答が出てこない。
「おにいちゃんどうしたの」
目の前に小さい子供が現れた。やれやれこんな子供に慰められるとはな、俺もとうとう……
「かぐやひめよんだ?」
耳を疑った。かぐや姫?
声の主の方を向いてみる。そこにいたのは……
「けんちゃん?」
小さな怪獣けんちゃんだった。
「俺を覚えているのか?」
「うん」
俺の中で導きの光が輝き始めた。この子ナツキを知っているんだろうか?
「ナツキを覚えているか? この間いっしょに遊んだだろ」
「うん。おぼえているよ」
「どこにいるか知らないか?」
「あっちにいたよ」
けんちゃんは小高い山を指差した。
「ほんとか?」
「うん」
けんちゃんはかわいらしい笑顔を俺に向けた。俺は確信した。この笑顔に嘘はないと。
「ありがとな」
俺はけんちゃんにお礼を言って、指差した方向に走り出した。
[前へ*][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!