涼宮ナツキの憂鬱
第一一九話
このハンカチがガラスの靴だということは解った。じゃあなんで靴じゃなくてハンカチなんだ?
あの日、確か弁当をキッチンのテーブルに置き忘れてナツキに屋上に連れられたんだっけ?そういえばあの時のナツキは少し様子がおかしかったな。いつもなら手を引っ張っていくはずなのに俺の前をズカズカと歩いていた。まあそれはいい。それで俺はナツキの弁当を食べたんだ。かなりうまかった。もう一度食いてえな。
俺は首を横に振った。今はそんなことどうでもいい。
それで俺の頬にご飯粒がついてて、ナツキにハンカチを借りて、追いかけて……
何なんだろう?何か忘れている気がする。色?味?音?感触?匂い?
その答えはハンカチに残っていた。
ハンカチを鼻に近づける。かすかにラベンダーの香りがする。
「あなたを待っています」
ラベンダーの花言葉が頭をよぎる。みくるさんに教えてもらってよかった。それがナツキの願望ならば、俺はそれを叶えてやる義務がある。なぜかって?それはな……
ナツキが俺にとってのシンデレラだからだ。
俺は家を飛び出し、夕焼け空の下自転車を走らせた。
ナツキ今どこにいる?迎えにいってやるから教えてくれ。
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