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小説 短編
〜雨〜
「今日こそは花を採ってこないと・・・」

そう言っているのは赤のベストと帽子を着用している少年だ。

「熱があるなぁ・・こんな時に・・」

そう言いつつも彼は家をでて花を採りに「ダークレム」へ行った。

着くのには結構時間がかかった。花も苦労して採った。

「よし・・・かえるか・・やっぱしんどいな・・」

そう言って「ダークレム」をでた。すると・・

ぽつり ぽつり ぽつぽつぽつぽつ ザーーーーーー・・・・・

急に雨が降り出した

「まじかよ・・・・速く帰ろ・・・」

彼は走った。すると急に吐き気を催した。

やっぱ家でおとなしく寝てるべきだったかなぁ・・・と彼は思った。歩いて帰ることにした。

ザーーーー・・・・・

雨は強くなる一方だ。日も落ちてきて暗くなってきたし、とても寒い。雨のせいで目の前もよく見えない。気分も悪くなってきた。

「はぁ・・はぁ・・・もう倒れそうだ・・」

そう言ってふらついていたら目の前に誰か立っているのに気づいた。

雨のせいでよく見えないががっちりした体の男だと言うことが分かった。その男は彼に近づいてきた。

そしてこういった。

「おまえ・・・まさかディディーか?

男は言った。彼も誰だか気づいたようだ。

「あ・・・ドンキー・・・」

「なにしてんだよこんな雨の中傘もささないで!!」

「ちょっと花を採りにダークレムまで行ってきたんだ・・雨が降るとは思って無くて・・」

「全く・・天気予報ぐらい見ろよ。今日は晩からはずっと雨だぞ」

「そうか・・じゃあなるべく速く帰ろうか・・」

「大丈夫か。傘ぐらい貸そうか?」

「大丈夫だよ・・それよりドンキーも速く帰ったほうがいいよ・・それじゃあね」

そう言って彼はゆっくり歩き出した。すると男は

「なぁディディー・・そう言えば会うの久しぶりだよなぁ・・・俺、この頃思うんだ・・またお前と一緒に冒険出来たら良いなって。ま、いつでもいいから遊びにこいや。まってるからよ。じゃあな」

そう言って男は去っていった。雨が降ってるから男の姿はすぐに見えなくなったが、彼は上を向いた・・

そうだな。またいつか冒険しような・・

ザーーーーーーーー・・・・・・・

次第に雨足が強くなってきた。呼吸もくるしくなってきたし、目もかすんできた。しかし彼は右手に1本の花だけはしっかりと握りしめていた。するとまた誰かが立っているのに気づいた。

雨のせいでよく見えなかったが異様に手の長い人だと分かった。するとその人はこっちに気づいたようで少しずつ近づいてきた。

するとその人は

「もしかして・・・・ディディーはん?」

その人は言った。彼も誰だか気づいたようだ。

「あ・・・・ランキー・・」

「なにしてんねん、こんな雨の中傘もささずに歩きはって」

「ちょっと・・・・ダークレムまで花を採りに行ってきたんだよ・・雨が降るとは思ってなくてさ・・」

「花・・・・?あーーもしかしてディクシーはんにあげるんでっしゃろ?」

「そうだよ・・・・今日こそ告白しようと思ってるんだ」

「まあがんばりーや。傘でもかしまひょか?」

「いや・・いいよ。悪いから・・じゃあね」

彼はゆっくり歩き出した。するとその男は

「ディディーはんと会うのは久しぶりやなあ・・・一緒に冒険したとき・・ほんま楽しかったで。また・・機会が会ったら冒険しよな。楽しみにまっとるで〜」

そう言ってその人は去っていった。彼は振り向きもせずに顔を雨に打たれながら空を見上げて・・・

僕も・・・待ってるよ・・

もうダメだ・・・そう思いつつふらつきながら歩いている。目もぼやけてくる・・倒れそうだ・・・・

するとまた前に人が立っているのに気づいた。

帽子とチョッキを着ている大柄の男だ。今度は誰だかすぐ分かった。

「チャンキー・・・?」

すると男は

「あ・・・ディディー?なにしてんの傘もささないで」

「いや・・・ちょっとね・・・」

「どうした?顔赤いぞ?熱でもあるんじゃ無いか?」

彼は返答に困った。気を遣わせたくはない。彼は

「そぉ?別に何とも無いけど・・」

つい嘘をついてしまった。

「そうか・・・そうだよな。いつも元気なディディーが熱なんて出すわけないよな。」

男は笑った

「傘でも貸そうか?ほんとに風邪ひくぞ」

「いや・・・いいんだ・・どうせもうぬれてるし・・・じゃあね」

彼はゆっくり歩き出した。すると男は

「ディディー・・・久しぶりだな・・・・最後に会ったのはいつだっけ・・まあ、あのときはホントに楽しかったぜ。また一緒に冒険出来る日が来るといいな・・じゃあな」

男は去っていった。彼はゆっくり歩きながら

その日を・・・楽しみにしてるよ・・

ザーーーーーーーーーー・・・・・

ダメだ・・・ホントにふらついてきた。たぶん熱は39度ぐらいあるだろう・・・・まあ、もうすぐディクシーの家だからあと少し頑張らないとな・・

すると、家が彼の目に映った。ディクシーの家だ。彼はゆっくり扉へと近づいた。

そしてドアをノックした。中からは声が聞こえてきたからディクシーはいるだろう。

ゆっくりとドアが開いた。すると出てきたのは金色の髪を両側に下げた女の子だった。

「あれ、ディディー?久しぶり。びしょぬれじゃない。とりあえずあがって。タオル貸したげるから」

「タイニー・・久しぶり・・・・それよりも・・ディクシーいる?」

「・・・・・あがればいいのに・・」

「いいんだ・・すぐ帰るから・・ディクシーいたら呼んで欲しいんだけど・・」

「分かったわ・・・・って花?!?・・・まさかお姉ちゃんに・・・」

「もう。分かったから速く呼んでくれよ!!」

「ふふ・・・じゃあちょっとまって^^」

ザーーーーーー・・・・

やっぱりまだ雨はふっている。とても寒い・・。ものすごく息苦しい。倒れそうだがここは我慢することにした。

ガチャ・・・・

ドアが開いて中からポニーテールの女の子が出てきた。

「なんなのディディー?こんな時間に・・しかもびしょぬれで・・・寒くない?」

「・・・・・・・・」

「どうしたのよ。黙り込んで。用があるならさっさと行ってよ。食事つくってる途中なんだから!」

「ディクシー・・・・これ」

彼は右手を前に出し、一輪の花を彼女にわたした。花の色は薄れていたが、いきいきとした花だった。

「これを・・・・私に・・・でも何で・・」

「ディクシー・・・・えっと・・・実は・・・」

ダメだ・・・なかなか声が出ない・・・・

「何よ。さっさと言いなさいよ」

「・・・好きだ・・・・ディクシー・・」

「えっ・・・・」

「一緒に冒険したときから・・・好きだった・・・それで・・今日言おうと思って・・ダークレムまで行って・・花を採ってきたんだ・・ディクシー・・・愛してる・・」

そう言って彼は優しく彼女を抱きしめた。雨に濡れてて冷たいはずなのに、何故か暖かかった。小さな温もりを感じた。彼女は顔をあからめた。そして、こういった。

「えっ!これってプロポーズってやつ?プロポーズなんかされたの初めてだからどういっていいか分かんない。だけど・・・」

そう言って彼女はゆっくりと顔を近づけた。

「とっても嬉しいよ。」

そう言って彼女は彼の頬に優しくキスをした。短い時間だったのにとても長く感じた。

「じゃあ・・・僕もう行くね」

「うん。またいつでもいいから来てね」

彼は振り返りゆっくりと雨の夜を歩き始めた。そして、すぐに見えなくなった。彼女は静かに彼を見送った。

「もう・・・・ディディーったら・・・」

「ふーん。お姉ちゃんやるね〜」

「えっ!!タイニー!見てたの?!?」

「うん。最初から最後までね^^」

「もう・・・・」



ザーーーーーー・・・・・・・・

「ダメだ・・・ムリしすぎた・・・」

彼はもうふらふらでゆっくりと歩いていた。熱は相当高いだろう。雨が少しずつ彼の体力を奪っていく。もう・・限界だ・・。そして・・

どさっ・・・・・

彼はその場に倒れ込んでしまった。助けを呼ぼうとも声が出ない。ただ聞こえるのは彼の体を強く打つ雨の音だけだ。

息が荒い・・・気分も悪い・・・

「僕はもうダメだ・・・体力も無くなってきたし、ほとんどなにも見えない・・」

ザーーーーーー・・・・

雨は彼を追いやるようにどんどん強くなってきた。

「・・・そう言えば・・今日はいろんなことが会ったなぁ・・・昔一緒に冒険した友達にも会えたし、ディクシーにもちゃんと僕の気持ちも伝えること出来たし・・・もう・・いいか・・」

そう言うと、彼の目からは涙が流れ、頬を雨と一緒につたった。その涙は雨に混じり、すぐに分からなくなった。

「眠くなってきた・・・」

そう言って彼は優しく目をつむった。もう二度と目を覚まさないように・・・

そして、深い眠りについた・・・・・









彼は目を覚ました。なんだか、暖かかった。もしかしてあの世かも、とも思った。

「此処は・・・・?」

気づいたのはベッドの上だった。白く、柔らかいベッドだった。その部屋に、誰かが入ってきた。

「あ、ディディー。やっと気づいた。良かった〜」

「ディクシー・・・?此処は何処?」

「何処って、私の家よ。」

「僕は何故此処に?」

「え〜っと、1週間前だったかな?ちょうどディディーに告白された日の夜。ドンキーたちがディディーをかついで此処にきたの。なんかディディー顔色悪そうだったから後をついて来たんだって。そしたらディディーが雨降るなか倒れてたからビックリして私の家に運んで来たってワケ」

・・・そうだった。そう言えば僕倒れてそのまま目をつむったんだった・・・

「ドンキーたちが・・・じゃあ・・ランキーとチャンキーも?」

「そう。ディディーったら1週間も寝たっきりだったから心配したのよ〜」

そう言って彼女は彼のおでこに手を当てる。

「うん!熱も下がってる!もうすっかり直ったみたいね。もう、熱があるのに遠いとこまでいって。・・・・もう二度とこんなムリしないでよ。でも、うれしかったよっ」

そう言ってディディーに抱きついた。

「うおっと!・・・分かった。もうしないよ・・・」

そう言ったときドアが開いて数人、人が入ってきた。

「おーーっ。ディディー。やっと起きたか〜」

「ほんま心配したで〜」

「熱があるなら言えば良かったのに」

「ドンキー・・ランキー・・チャンキー・・・・・ありがと・・・・正直・・・あのとき相当しんどくて・・でも心配させたくないから・・・なかなか言えなかった・・嘘ついてごめん!!」

そう言うと、彼の目からはまた涙があふれた。

「心配かける?そんなこと考えてどうすんねん。あきまへんわ。何かあったらいつでもゆうてや〜」

「ランキー・・・ありがとう・・・・・・」

そこへ、また一人入ってきた。

「あ、ディディー。おはよー。1週間ぶりね。私とお姉ちゃんでつきっきりで看病したんだから、このかりはいつか返してもらうわよ」

「ははは・・・分かったよ。ありがとう」

「あ、それと重大ニュース!!なんと!私のお姉ちゃんとディディーはつきあうことになりました〜」

「おーー!ディディー。やるじゃねえか。ひゅーひゅー」

「ちょっ・・・タイニー、ドンキー・・・・もう!!」

「やりまんなぁ。ディディーはん」

「ムリしてまで花とりにいったのか・・・やるなぁー。俺じゃ怖くて一人でダークレムなんかいけねえぜ」

「ん・・・ありがとう。みんな」

彼はそう言って、彼女の方を向いて、顔を近づけた。そして今度は彼の方から彼女の唇に優しくキスをした。


〜雨〜 完!!


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