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好きなんだけど!
夢とセクハラ



「ん……っ、みず…」




いつも寝る前枕元に置いているはずのペットボトルを、目も開けないまま手探りで探す


少し温くなったそれを見つけて、一気に半分ぐらい飲み干した。
もう一眠りしようとふとんにもぐり込み、異様な違和感に目を開ける



…ここ、どこ?




部屋は薄暗かったけど、俺の部屋ではないのは確か。
寝室はこんな広くない

急に目が覚めて身体を起こした。
ダルい感じに顔をしかめる




そういや俺、有村とバーで飲んでて…




まだ覚醒しない頭はそれ以上思い出せなかった。
あの後、そろそろ帰ろうってなって、俺、車に乗ったんだっけ?


寝不足が酷かったから、店で寝てしまったのかもしれない



どっちにしろ、年上失格だけど




それでも熟睡できたらしく、頭は結構スッキリしている

ベッドから降りるとドアの外からはテレビの音が漏れていた。
電気もついているらしい


そっと部屋から出ると、廊下を挟んで向かいのリビングの扉は開けっぱなし。深夜のテレビショッピングが、独特のテンポで流れている




ソファから投げ出された足を見つけた。
背もたれで見えないが、どうやらそこに寝転んでいるらしい

俺に気付かないところを見ると、もしかしたら寝てるのか




そっと上から覗き込んでみると案の定、リモコンを握ったまま規則正しい寝息を立てている

部屋着らしい白いTシャツにグレーのスウェットに、まだあどけない寝顔。
髪は少し濡れていた。
風呂に入ったものの、ろくに乾かさずに寝たらしい


こうやって見ると、スゲー子供っぽい。
なんかこう、俺の母性本能が目覚めそう




だって、見るからに俺の家より広いここに、今1人で住んでんだろ?
まだ遊んで楽したい年頃だろーに、バカみたいに働き詰めで甘える親も近くにいなくて


あー、それでこんなひねくれてんのかな



少し骨張った手を指でなぞる。
ちゃんと飯は食べてるんだろうか
そのまま、今にも落ちそうなリモコンを取って、テレビを消した。
このままじゃ風邪ひきそうだし、俺がかぶってたふとんでも持ってくるか…



なんか、実家の弟のことを思い出してしまう。
頭も口も悪いのに、今はまさかのショップの店長。
結構前に飲みに行ってから、随分連絡もとっていない。
ちゃんと生きてるんだろうか


あれこれ考えていると、ソファで寝ていたはずの有村の目がぼんやりと俺を見ていた




「ささがわさん……何これ、ゆめ?」




まだ寝ぼけているらしい。
たどたどしい話し方で俺の名前を呼ぶ。
閉じそうになる目を何度も開き、薄く口を開いて手を伸ばした


こいつ、寝起きこんな朦朧としてんだ。
血圧低そうだもんなー



何が言いたいのか、しかたねーなと顔を近付けると、俺の服を握った手にぐっと力が入ったのがわかった。
何が起こったのか確認する前に、有村のキレイに染められた茶色い毛が頬をかすめる




「ちょっ……何…」




ひっぱられて有村に覆い被さるように倒れた。
慌てて起き上がろうにも背中を腕でホールドされて、うまく力が入らない

寝ぼけてるくせに、なんつー力だよ!



てゆうか一体なんなの。
起こしたから、怒って殴られる?
こいつならやりかねない


万が一に備えて身体を固くしていると、耳に擦り寄ってくる有村。
小さくうめく声がくすぐったくて、身体中に鳥肌がたつ




「ッ、ぁ……ありむらっ…」




えっと、このままたたき起こしてもいいんだろうか。
こいつも寝不足だろうし、できることなら寝かせてやりたいんだけど


ゴロゴロと擦り寄ってくる有村は、なんか大型の猫みたい。
ヒョウとかチーターとか、そんな感じ


やっぱり親に甘え足りないんだろうか。
なんかかわいそうになってきて、シャンプーの匂いのする頭を撫でてやると、唇が耳を這う。
無意識に身体が跳ねた

くすぐったさに頭を上げるも、後頭部を手で押さえられ有村の首元で鼻を打つ。
痛い


抱き枕か何かと間違えてんじゃないだろうか。
なんか、昔のラブコメ的展開。
むさ苦しい男2人でやることじゃねーだろうに

やっぱり起こしてしまおうと思ったら、有村が俺の頭を撫でた




「……すき、あいしてる…」

「ぅ……えっ…!?」




ゼロ距離で囁かれた言葉は、小さくても聞き逃すはずもなく変な声が出る


愛してるって、こいつ俺のこと誰かと勘違いしてる!?
それならちょっと待って、この空気はまずい!



起きた時にいるのが俺だったらイヤだろう、という俺の気遣いもむなしく、唇は耳から首へと降りてきた。
そーゆうのは本人にお願いしますホントに!




「まっ、有村…!起きろって」




俺です、笹川なんです!




「ひ……ッ、んぁ…!」




首を舐められて変な声が出る

昔から首はダメで、女の子にキスマークすらつけさせたこともない。
それなのに、男にこんなこと…




「ン―…ッ!?」




チクリと嫌な感触に腕の力が抜けた

ウソだろ、今の、キスマーク!?


今はそれを確認できるわけもなく、戸惑っている間に喉の辺りを甘噛みされ、吸われる。
身体の奥が燃えるように熱い


これ、マジでダメだから…!




「もっ……あ、りむらってば―…ッ!」

「ッは、あっ!?」




力の入らない手で有村の首を押さえ付け、そのまま力一杯締め上げた。
俺の渾身の一撃


有村は息ができなくなり、手を離して思いきり咳き込む




「ッ、何、いきなりっ…笹川さん!?」




身体を起こすと、ちょうど俺がまたがるような形になった。
少しだけ気分がいい

有村はまだ状況が理解できないらしく、咳き込みながら俺を見上げる




「いい眺めだわ」

「げほっ…降りろ、犯すぞ」




マジでさっきのセクハラで訴えてやろうか


チキンな俺はあっさり退いてしまい、有村が立ち上がると空いたソファに腰を下ろす。
やっと自由になった身体をそのまま横たえた




「やっと起きたか酔っぱらい」

「その件は、大変お世話になりました。俺いつから寝てたの?」

「車乗ってすぐ爆睡。起こしても起きねぇし、死んだのかと思った」

「それはご迷惑を」




たかだか3杯でありえねー。
よっぽど寝不足だったんだな、俺




「明日仕事は?」

「ない。……あー、夕方からバイト」

「バイト?」

「貧乏ヒマなしっつーこと」





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あきゅろす。
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