[通常モード] [URL送信]

好きなんだけど!
そろそろ限界



「でも、ストックもいくつかしまってあって…」

「あー…」




ダメだ、いい言い訳が思い浮かばねー


いくら仲良くても、そこまでしねぇよな、普通




「笹川さん、うちにかなり来てたってことですよね?」

「…たまに、遊びに行くぐらいだって」

「たまに、でそんなことします…?」




言わねーのがお前のためなのに、根掘り葉掘り聞かないで


俺、嘘とか下手だって知ってんじゃん

あ、今は知りませんよね




「来てくれたら、なんか思い出せそうな気がして…」

「ほんと?」

「はい。だから、来てくれますか?」

「それなら、行く」




そんなことで思い出すなら、お安いご用ですよ

毎日でも通うわ




「絶対、約束ですよ」




記憶喪失の有村は、びっくりするぐらい可愛い


惚れた弱みってやつかもしんねーけど、これはヤバい

俺の理性よがんばってくれ




------------------------




有村が記憶喪失になって、ほぼ一週間


結局記憶は戻らないまま、俺は有村の家にいた



あんなに通いつめたはずの家が、今は他人の家みたい。
そわそわと落ち着きなくソファに座っていると、有村がリビングに入ってくる




「すいません、疲れてるのに」

「お前ほど疲れてねーから、大丈夫」

「とりあえず、飲みますか」




有村に手渡されたアルコールのビンの栓をあけ、そのまま口をつけた。
有村は、見るからに甘そうなコーラハイを舐めるように飲んでいる



いつもなら隣に座るのに、今は少し間を開けて床に座っていた

正直、ちょっとさみしい


お前も飲んでるってことは、泊まってもOKってこと?




「笹川さん、お酒強いんですね」

「お前は弱いよな」

「おいしいんですけど、すぐ気持ちよくなっちゃって」




ふにゃりと笑う顔は、なんとなく無防備

酒が入ってるからかもだけど、そんなんで大丈夫なのか



がぶりと半分ぐらいあけたビンを、有村が見る。
飲んでみたかったのかそれを差し出すと、受け取って隣に座った


近くなった有村の匂いに、頭がぼーっとする。
無条件で身体が熱くなる



無言で飲む有村の肩に、さりげなくもたれてみた


全然さりげなくねーし。
男同士で何やってんの、って感じ




「笹川さん、もう酔っちゃったんですか?」

「そうかも」

「早いですよ」




ほとんど減ってないビンを受け取って、一気に飲み干す。
透明のガラスが、光に反射していた




「…なぁ、なんか思い出した…?」




急かすのはダメだってわかってる。
こんなこと聞いても、思い出す訳じゃねーのに


頭を上げて有村を見ると、申し訳なさそうに謝られた



これは有村に限りなく近い、有村じゃねー人。
有村は、どこに行ってしまったんだろうか




「笹川さんは、さみしいですか?」

「んー?」

「…俺が、有村さんじゃなくて」




さみしそうなのは、お前だろ


しょぼくれた犬みたいな顔をするもんだから、さみしいなんて言えなかった

極力甘くない缶チューハイを取って、有村の頭を撫でる




「ちょっとだけ」

「ごめんなさい」

「なんでお前が謝んの」

「わかんないです」




グレープフルーツの味が、口の中に広がった。
いつもより早いピッチに、頭がくらくらする



今すぐキスしたい

触りたい

触ってほしい



何してもいいから、全部嘘だよって、めちゃくちゃにして。
おかしくなるぐらい、激しくして



疼く身体と危うい思考回路に、ため息をついた

かなり欲求不満かも



かれこれ3週間近くなにもしてねーから、当たり前か。
できないと分かると、よけい考えてしまう悲しい性



ごまかすように、片っ端から酒を飲んだ

寝てしまえば、何も考えなくていいから




「笹川さん、眠いですか?」

「うん…」

「寝室行きましょう。風邪ひきますよ」




促されるまま、寝室に連れていかれる


もちろん何かするわけでもなく、普通にベッドに寝かされてしまった。
一緒に寝るなんてことはないはずだから、有村はソファで寝るんだろう



うとうとと目を閉じると、温かい手が俺の髪を撫でる。
有村と全く変わらない感覚に、たまらなく胸が締め付けられた




「…俺、風呂入ってきますね」

「ん…」

「何か、欲しいものありますか?」




一瞬ためらって、できるだけ冗談に聞こえるよう、笑って息を吐く




「おやすみのキス、してよ」




案の定固まってしまった有村は、じわじわと赤くなってきた。
からかいがいのある奴

見るからに困ってしまった有村は、手を離して腰を上げる



我ながら、冗談でも無茶なことを言ったのだと分かった。
嘲笑気味に笑って、有村を見る




「嘘…ごめん。おやすみ」

「おやすみなさい…」




立ち上がる寸前、有村の消えそうな声が聞こえた



俯いた顔


通った鼻筋

整った唇



ちゅ、と軽く降れるだけのキスに、頭が真っ白になる




「は…っ?」




有村が逃げるように部屋を飛び出すから、俺だけがぽつりと残されてしまった


寝転んだまま、理解できない俺は有村の出ていったドアを見つめる。
閉じたドアに、間抜けに開いた口がふさがらない



今の、何


なんでキスしたんだよ



期待、してしまう



途端に恥ずかしくなって、枕に顔を埋めた

顔が熱い。
心臓がうるさい



枕から有村の匂いがして、もう限界だと思った



無意識に、手がズボンの中に伸びる




「……っ…ん…」




ダメだとわかってるのに、手が止まらない。
もう勃ち上がったそれに触れただけで、ふるりと震えた


熱が身体の中を渦巻いて、理性が崩れ落ちる





[*前へ][次へ#]

18/39ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!