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赤と黒


ゆっくり目を開ける。
まず映ったのはとても高い天井だった。
そして、

「やっと、起きたか…」

赤い瞳の黒い人。

「おい、お前名前は?」

「…………………」

「無視か…。俺は、シンって名前だ」

「……………………」

勝手に自己紹介された。黒い人はシンと言うらしい。
別にどうでもいいが。
よいしょと心のなかで呟き上半身だけ起き上がる。

「で、お前の名前は?」

名前……?
そんなのは忘れた…と言うか元々そんなのあったのだろうか?
捨てるも何も元々なかったのだろうか?

「おい………チッ。
まぁいい、お前前髪切れ。
お前の顔が見えん」

私の前髪というか髪は産まれてから一度も切ったことない。
切る意味がなかったから…。
だから、私の前髪は顔全体が隠れてしまっている。
相手から私の顔は見えなくても、私から相手の顔は見えるから、
気にすることもなかった。
まず、話す相手なんているわけがないのだから。

「返事なしか……よし、切るぞ」

と、シンはいつの間にか用意したハサミをチョキチョキと動かしながら、私に近づいてくる。
あぁ、めんどくさい。そのまま、そのハサミで刺してくれればいいのに…………。
ショキショキと、伸ばしたままの前髪が切られてく。
目の前が広がってく。
毛布、ベットに散らばる私の髪。
誰が掃除するのだろう…私じゃないだろう…。
そんなこと考えてたら、

「よし、これでいいだろう。
…………俺の予想通りか……」

シンがゆっくり離れて世界が広がる。
あの前髪でも見えてたけど、シンって格好いい顔をしている。
短髪だけど綺麗にまとめられてる黒髪。
黒に映える赤い赤い私と同じ瞳。
喋ると見える尖った犬歯。
じっーとシンを観察していたら、

「おい、お前。その喉の傷跡、どうした?」

突然言われついシンの目を反らす。
なんといえばいい、言えるわけがない。
だって、私は話せないのだから………。

「今度はあからさまな無視か、クククク。
もしかするとお前喋れないのか?」

そうだ、そのもしかするとだ…。

「そうなら、頷け」

顔をシンから反らしたままコクンと頷く。
これで満足か?なら、もう1人にしてくれないだろうか?

「じゃあ、名前は?あるなら頷け」

あるのかってないの前提なのか。
まぁ、ないのだから頷く必要はないだろう。

「頷かないってことはないのか。
じゃあ、お前の名前はカナデな」

突然のことでついシンの顔を見てしまった。
そんな反応に満足したのかニヤリの笑い、

「俺はシン。お前はカナデ。わかったか?」

名前がないと知ったシンは私に勝手に名前を付けてきた。

「カナデ、すっごい不機嫌顔だぞ、ククク」

不機嫌顔した覚えはないが、
突然名前を付けられたのだ。
名前しか知らない他人に……。

「カナデは笑った方が可愛いと思うが?」

ニヤリと笑いながら、シンは左手を私の頬に触れる。
この人の手凄く冷たい………。
そして、綺麗な手だ。
ぼっーと考えてたら、

チュッ

何がおきたか全然分からなかった。
左手が頬から離れその手が頭にまわり
グッィとシンに顔が近づいたら…………。
シンはペロッと自分の唇をなめ、

「ククク、可愛い………。
あぁ、ごちそうさま」


私は初めて怒りを覚えた。
シン、いやコイツを殴りたい………と。





目覚めたら貴方がいた。
名前とキスと怒りを私は知った。



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あきゅろす。
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