恋するあの子は無表情。
…なな。
「どした?食べねーの?」
顔を赤くして固まったままの王道君を見て涼太は不思議そうに首を傾げた。
「…涼太。」
俺はポテトを摘みながら反対の指で涼太の肩をちょんちょんと叩く。
「んー、どした?」
「…真っ赤」
俺は王道君を指差して言った。
「だから何だよ…」
「…それ」
怪訝そうな顔をする涼太にスプーンを指差して言うと、涼太はハッとしたように王道君にあーんしていたカレーを自分で食った。
と、
「ああぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!??!?!!」
「っ…」
「るせっ!」
「沙夜!?」
突如叫びだした王道君。
俺と涼太は耳の痛みに悶え、カウンターでメニューを注文していた松村君は、血相を変えて王道君の元に駆けつけた。
「沙夜!?どうした!?」
「お、俺のカレー…!!」
フルフルと小刻みに震えながら涼太のカレーを指差す王道君。
「は?カレー?沙夜、そんなにカレーがよかったのか?」
「違ぇ!!」
松村君は訳がわからない、といった表情で「カレー、カレー…」と呟いている王道君をあやしていた。
「涼太先輩、何があったんですか?」
「あぁ…俺がカレーあーんってしたら固まったから、一緒のスプーン使うのヤだよな。と思ってカレー食ったら、耳ぶっ壊されそうになった…。」
涼太は手短に説明した。
「…それって…」
松村君はそう言うと慌てて、新しいスプーンを取り、少し頂きます、と言って涼太のカレーを掬い王道君な前に差し出した。
「はい、沙夜。カレーだよ」
王道君はゆっくりと顔を上げると
「いらねぇよっ!!」
と言ってバシッと松村君の手をスプーンごと弾いた。
松村君が
ガーン!!
という効果音が付きそうなくらい落ち込んでいる。
それを余所に王道君はプンスカと怒りながら松村君が買ってきたカツ丼を頬張り始めた。
…勝手に相席してるし…。
「…大丈夫、か?」
あまりにも松村君が可哀想になった俺は、松村君のそばに駆け寄って落ち込んだ様子の松村君を覗いた。
「…文人、先輩…。」
松村君は顔を上げると少し寂しそうに微笑んだ。
「なんか、俺…失恋しちゃいました。」
…は?
失恋って…王道君に?
「なんで…?」
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