恋するあの子は無表情。
…に。
処変わって、俺は今食堂に来ている。
大きなガラス張りの部屋で、外が一面に見渡せる。
外には庭があり、手入れの行き届いた花園の中で優雅に食事を楽しむ生徒もいる。
「すっげーなぁ、本当にこれが食堂かよ…。」
隣に立つ涼太が感嘆の声を上げた。
俺達がなぜ、食堂に来たのかと言うと、
率直に言えば、腹が減ったからだ。
勿論、俺じゃなく涼太の腹だ。
そこで、涼太は編入したてで不安…という訳では無いだろうけど、同室者の藤崎を誘って食堂に向かっていた。
途中、俺と遭遇し
(藤崎は先に行ってしまったが)
丁度良いから俺も一緒に来い…と言われたので、今に至る。
何だか面倒くさい事が起きそうな気はしたが、考えるのも面倒くさいので、とりあえず涼太に流されるまま連れ添ったのだが…
「なぁ…涼太?」
「なんだい?文人君。」
「…食堂の生徒達から…過度の視線を、感じるのは…気のせい、か…?」
「そうだな、気のせいじゃないな、事実、可愛いチワワ君達はお前に熱視線を浴びせ続けている。」
何でだ。
可愛いチワワ君達ってなんだ。
「目を逸らすな文人」
逸らしてねぇよ。
「ほら、耳を澄ませ…。」
澄まさない、澄ましたくない。
そう思ったが無情にも俺の耳は捉えてしまった…
『誰?見たことないねー、』
『左の人イケメンじゃない?』
『もしかして今日編入してきた人じゃない!?』
『僕狙っちゃおうかな〜』
「……。」
「ほらな?」
……ちくしょうが。
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!