恋するあの子は無表情。
…一堂に会す。
「お、文人ー!」
「…涼太…」
廊下をぶらぶらと歩いて、人がちらほらと集まっている豪勢なロビーに差し掛かったとき、反対側の通路から
頬に大きな絆創膏を貼った涼太と、あからさまに悪そうな仏頂面の男が歩いてきた。
「……涼太、その人は…?」
「おう、彼は俺の同室者で藤崎さんだ。」
「…。」
俺は軽く会釈した。
「んで、こいつが幼馴染みの笹本文人君な。」
涼太は満面の笑みで藤崎を振り返って、俺を紹介した。
「……よろしく、」
「…ッチ、」
藤崎は俺を頭の先から靴の先まで一通り見た後、小さく舌打ちをしてツカツカと1人で歩いていってしまった。
「……。」
何なんだ、一体。
「あー…照れ隠しだな、アレは。」
「…。」
照れ隠しで舌打ちはあり得ねーだろ。大体、何故照れるか。
「え、何故ってお前、そりゃぁ…なぁ…?」
「…。」
「いてっ」
ニヤけを隠しきれていない涼太にイラついた俺は涼太の頭を軽く叩いた。
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