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Novel GS2(長編)
冬の海 1 主視点 授業中ぼんやりとしていると若王子先生に注意をされて・・・ 09/03/08up
――ホントに意地っ張りだな――

秋雨が降るひんやりとした空気の中、バス停で出会った彼。

あの人、カッコいい人だったなぁ。

窓に張り付いてお互いを吸収して流れ落ちる雨粒を眺めながら、私は昨日の事を思い出していた。

昨日の彼の細かい所まで思い出せる。

一度の、それも、ものの20分間位の接近遭遇。

下校途中、突然の激しい雨に降られて、お店の軒下で雨宿りしていると隣に現れた彼。

端整な横顔に釘付けになってしまった。

目、鼻、口、輪郭、全てが整っていて、赤みが差した短い髪は彼の顔の端整さを一層引き立てているように見えた。

傘を買おうと、一緒に近くのコンビニまで走って、結局最後の傘を他のお客さんに買われてしまった。

わたしから言わせれば、彼の方がよっぽど意地っ張りだと思う。

結局、お互いに濡れて帰る事になってしまったけど・・・風邪ひいてないかな?

頬杖をついてぼんやりしながら、いくつもの雨の筋が窓に爪を立てるように筋を作り始めるのを見ていると、

「結城さん・・・先生の授業中はつまらないですか?」

しゅんとした若王子先生の声で我に返った。

はっとして回りを見ると、教室中の生徒がわたしを見ている。

「す、すいませんでした」

は、恥ずかしい・・・。

「まぁ、いいでしょう。
あ・・・そうだ、化学室の片付けの手伝いをしてくれれば先生、機嫌直しますけど・・・」

先生からわたしへの提案に教室中がどっと沸き返った。

え?

私が目を丸くしていると、先生は私の心の中を読んだように言った。

「冗談ではありません。先生が拗ねたままだと今度の授業はテストになっちゃうかもしれませんよ?」

若王子先生がにっこりと笑って言った言葉にクラス中が敏感に反応する。

「結城、片付け決定!」
「頼むぞー」

口ぐちに私の居残りを肯定する声が上がる。

みんな・・・ひ、人事だと思ってぇ・・・。

「先生、ちょっと、横暴じゃないでしょうか?」

わたしはなんとか逃れたい一心で、精一杯笑顔を作って言うと、

「では、質問です。授業を聞いてなかった人は誰でしょう?」

若王子先生はにっこりと笑いながら、わたしが逃がれられないように止めを刺しにかかった。

「・・わたしです」

「じゃあ、化学室の後片付けは誰がやるんでしょう?」

この学校に入ってから・・・

「・・・わたしです」

笑った顔の鬼が居る事を知った。





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