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Novel GS2(長編)
噂 3
「付き合うなら年上と年下、どっちがいい?」

真波が最後に残しておいた鶏の唐揚げにフォークを刺した時、一緒にお弁当を食べている友達の一人がそういった。

屋上の木陰の下、昼食時の女子同士のいつもの他愛ない会話。

だいたいが恋愛、ファッション、占いとかが話題の主流で、今日もその例に漏れずな展開である。

「やっぱ、同じ年」「年下でもいいなー」と回りの言葉を聞きながら、前にもこんな話したことあったような気がするなと真波は思った。

「真波はどっち? 年上、年下、それとも同じ年?」

「わたしは、年上がいい」

唐揚げを呑み込んでから答える。

「えっ?同じ年じゃないの?」

「うん。じゃない。なんで?」

「へぇー、じゃあ赤城は別なワケ?」

「え?」

「あ、あたしも聞いたよ。真波が赤城を図書室に呼んだとかって」

真波以外の、その場にいる四人ともが頷く。

「ちょっと、それ、違うから。赤城くんが本探しているのをたまたま手伝って、たまたま一緒に教室に戻っただけ」

「ほんとーに?」

四人の声が重なった。

「本当だよ。第一、わたしは同じ歳や年下は好みじゃないし。それに、わたしとの噂なんて赤城くんに悪いよ」

いって真波は両手を大袈裟にヒラヒラと振った。

「ふーん。図書室に呼んだとかっていうのは違うと思ったけど、赤城の事好きなのはアリかもしれないと思ったのに」

「ない。ないから」

真波はキッパリと言うと、四人とも、なんだ、とでもいいたげな顔をして口を閉じた。

「まぁ、真波には年上の方が合うかもね。真波自身が大人っぽいしさ。じゃあさ、何歳上迄ならOKなワケ?」

どうやら元の話題に戻ったらしい。

「うーんと、五歳上位迄かな?」

「あっ、あたしなら氷室先生と同じ歳の人までならアリ!」

「えー、マジで?」

続いていく他愛のない会話の連鎖に頷きながら、ふと佐伯の事を思い出す。

子供っぽいクラスメイトの男子達とはあきらかに違う、落ち着いた雰囲気の佐伯を真波は当然年上だと思っている。

もしまた話す機会があれば歳、聞いてみようかな。

今朝泳いだ海の方向を眺めながら真波は思った。

父親が仕事の為、ほとんど家に居ない寂しさがそうさせるのか、真波は少しだけファザコンな部分がある。

男の人は常に落ち着いていて、優しく強くあるのが理想と考えている真波にとって、落ち着きのない同じ歳や年下の男子は恋愛の対象外である。

しかし、恋愛の対象外と偉そうな事をいっても、実際の真波自身は恋愛自体まったく経験の無い未知のものだった。

一応は幼い頃に初恋は経験したが、あってないようなものといってもいいもので。

そんな奥手の真波は女子達が何故他人の好きな人を詮索し、憶測をするのかまったく理解出来るはずがなかった。

今の真波に理解出来ることといえば、

女子の連絡網の速さと、自分のちょっとした不運。

目の前の一握りの友達に噂を訂正しようが、所詮、噂は広まるものなのである。




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