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「でも何故私が結界強化術を…」
「そなたの話によると母親は岩隠れの忍だったそうじゃな。そして今はもう無き一族の血継限界を持つ稀な存在じゃった」
それは意識を越えた無意識の、私のより根本的な部分での母親への感情。今でも消えない何かは私の頭に痛みを与える。緩やかな痛み
「(もしかして…)何か、ご存知なんですか」
「…ワシがその一族を知った頃にはもう名すら残っておらんかったが、体内で巡っておるだけのチャクラを感じ取ったり、チャクラの性質や特性を感じとるというその能力が岩隠れの守りの要となっておる、と聞いたことはある」
チャクラの性質や特性を感じとる。体内で常に巡っているだけのチャクラを感じとる。確かな、私の力だ
「それじゃあ、この力は利用出来るものなんですか」
「、なんじゃ。意外そうじゃな」
「いえ…ただこの能力は」
『私の血継限界がなければ、アンタを産まされることもなかった』
「凄く地味なので」
「…地味とは誉め言葉のようなものじゃ。目立たぬことこそ忍、じゃからの」
「そうですね、はい」
なんだか可笑しくなって顔の筋肉が緩む。とても笑うという表情ではなかったが、落ち着いた表情ではあった筈だ。火影様はそんな私の目の前に大きな巻物を広げ、一言告げた
「結界の鍵、これをそなたに授けよう。大事にするのじゃぞ」
「はい」
その後指から流れる血で自らの名前を書き記す。これで木ノ葉の結界を扱う資格を得たらしい。だが何ら変わった様子はない
「どれ、里内のチャクラに集中してみよ」
言われた通りに目を閉じて神経を集中させる。ブワリ、と生暖かい感覚と共に妙な現象が起こった
「火影様…これは、一体」
「結界術は初代火影の考案した術での、鍵の管理者となった者にその能力が伝承される。それこそがこの里を覆う護りの一歩じゃ」
「こ、れが…」
ザァ…と風が木ノ葉を横切る感覚。囀ずる鳥の数、大きさ、人の分布、建物の位置、里の全てが私の一部であり、私の全てである感覚。到底言葉にはできない。まるで里自身になったような、とにかく信じられないことが起こっている気がした
「これにナマエの血継限界が加われば木ノ葉の護りはより強く、そしてより柔軟なものとなろう。時間はかかるだろうが、いずれ近い将来、そなたの結界術が完成することとなる。その為にも今はワシがその基盤を作らなんだな」
残り一週間で中忍選抜三次試験が行われる。大蛇丸の介入があるとすればそこだ。当然この人を、火影様を殺させるつもりはない。火影様も死ぬつもりはない…そうだと信じてはいても、どこかで最後だと思わせるように話されては、やりきれない
「必ず…成し遂げてみせます」
見届けてください、とは言えないまま。私は火影様の知る私の血継限界についてと、結界術を教えてもらうこととなった。今はただ、この息苦しさを拭うようにもがくしかないのだ
(彼の闇が、ちらつく中で)
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