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17


色褪せた景色。随分と薄暗い中に俺はいた。ぼんやりと思考能力が奪われていく。これは、夢か…それにしては妙な気もするが、それはどうでも良いことのように思える


『お母さん…!?』


いつの間にか目の前で誰かが倒れていた。真っ白な服を着て長い髪を乱すことなく静かに。そこが薄暗い森の奥でなかったら眠っているといってもおかしくはない。そしてその女を母と呼ぶ声が聞こえた。発生源は俺じゃない。だが俺から発せられていた


(俺にはこんな記憶はない…だとしたらこれは誰の何だ?)


視界がぐっとその女に近づく。まるで俺が走り寄ったかのように


『っそ、んな…』


深い絶望感。この全てを失った瞬間は、俺のあの時と似ている


(これは、ナマエの記憶)


俺はナマエの立場でそれを見ている。感じている。恐ろしく妙な感覚


『どうして…君麻呂……』


重たい


首をもかげて振り向く。少し後ろにいたその男は無表情に、だがしっかりと俺を(ナマエを)見て口を開けた


『お前がいくらその女に求めようと何も返ってこない』


『…そんなこと』


─無いなんて言えない。お母さんは私をいらないって、私を殺そうとした。私は、私にはそれが全て─


『お前は大蛇丸様の為に生まれた。あの方ならお前に与えてくださる。その女を守ると決めた力、その呪印もそうだ』


─大蛇丸が私の何?呪印?私は確かに力を求めた、でも今はもう─


『…もう何もいらない。私はあの男には何も求めない。その代わり、君麻呂』


ナマエの感情が流れてくる。コイツにとっての全てはあの倒れている女。世界を奪われた少女に生きる世界はもうない。復讐なども無論、成り立ちはしない


『私を殺して』


最後に見たのは、君麻呂という男が静かに涙を流す画面








(そして俺は目を醒ます)




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あきゅろす。
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