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16


生まれた直後から、私には1人の人しか見えてなかった。それが私を生んだ母。実母


その人の名は、今も知らない


そんな事実から始まる昔話を、少しだけ君に






16 囁く






「お母さん」


私の手は汚れを知らないかのように、この檻から出て行く前と何も変わらない。それは、汚して帰ると母が口をきいてくれないから。抱き留めてくれないから


そうしていつからか、私は返り血を浴びないスキルを手に入れた。毎日、闘技場に連れて行かれて、見知らぬ同じぐらいの子達と闘う。そう言った子達とは全て初対面。二度目がないのは全部殺したから


「今日は50人だった。あと100人でお母さんの願いを叶えてあげられるよ」


割り当てられた狭い檻の中で私は母に抱きつく。1000人殺れば、私たちには広い部屋が与えられる。その為に私は岩隠れの忍であった母に土遁を教えてもらった


「ふふ…もうすぐね」


私の頭を撫でながら、何処へとも定まらない瞳を絶えず泳がす母。私はただ温もりを享受して生きていた。ただこうしていれば毎日は幸せに変換された


そう、ノルマ達成まで残り100人となった日。変革は突然に私を取り巻いた


「お前がナマエだな。大蛇丸様がお呼びだ」


暗い廊下からチャリ、と鍵同士があたる音がすると各々の檻の中から凄まじい声。うめいてる。出して、出してくれって


「大蛇丸、様が?」


「早く行きなさい。あのお方を待たせては駄目」


キョトンとした私を立ち上がらせた母に促されるまま。私は檻を出た。そして檻を開けた女の子(歳は同じぐらい)の後ろを着いていく


「大蛇丸様がいるのはここより10km先の施設だ。外を走っていく。ついてきな」


「…外?」


檻の中からはもう出ている。ここが外だと認識していた私の目の前で彼女は彼女の言う外へと道を開いた


「アンタはずっとこの中に居たんだったな。これが世間一般に言う外だ、覚えときな」


薄暗さはあまり変わらないが、とにかく広い。天井が遥か遠く、丸い何かが光ってる。その光が眩しい


「あれ、あの光は何?凄く眩しい」


「月だ。朝になればもっと明るくなる。徐々に目を慣らせ」


もっと明るく、なる。朝って何だろう。月って何をエネルギーにしてるんだろう。帰ってきたら、お母さんに聞こう


「用が済めば、お母さんのとこに帰っていいんだよね」


それだけを確かめて、私は未知へと踏み込んだ。その先にいる大蛇丸の存在に興味はあまり無かった




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