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story
ぬぐわない
     ぬぐわない
   




今日は元気が無かった。
しくじったうえにあいつは怪我までした。

部屋を訪ねればスツールに座りうなだれたあいつがお出迎え。

「あかりつけないで。」

「…ああ。」

多分、声を殺して泣いている。
悔しいのだろう。

「怪我、大丈夫か?」

「こんなのいたくないよ。」

「落ち込むなって。今日は”たまたま間が悪かった”だけだ。」


そうだ。
間が悪かった。

俺たちと敵、空中で敵の肩を切り裂き、あと少しでとどめだったが、
敵が着地した目の前に子供がいた。


マカはその子を庇って怪我をして、敵を逃がしてしまった。


「怪我したくらいで逃がすなんて、キッドやブラックスターならしない。」

「…そうかもしんねーけど、でも…怪我したからだけじゃないだろう?」

「…。」



マカが敵を追いかけていかなかったのは、多分、



「キッドやブラックスターなら、あの子を一人置いてあの鬼神の卵を追いかけてっただろうよ。」



マカが泣きじゃくるあの子を道端に放って置けなかったから。

駆け寄って気づかったから。
怪我はないか、と
ママはどこ、と。


「その甘さが鬼神の卵を逃がしたのよ。」


「俺は、」


「俺は、それが悪かったとは思わないよ。」


「ソウル…。でも、」

「マカのいい所だ。」


なきたいのは、悔しいのは、俺のほうだ。

「俺の力が足りなかったんだよ。」


一発でしとめられれば、一人でも追いかけていれば、マカがへこまなくて済んだんだ。




月明かりだけの薄暗い部屋

泣いているなんて知られたくないだろうから涙はぬぐわない

ぬぐわない。 けど、

せめて、肩をさすって 額をあわせて 君に誓いを。




もっと、強くなるから

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