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4。






なんだか敗北感を味わった美和は、気を取り直して残りの生活雑貨を買い込むことにする。バイキングのお金を支払って、エスカレーターで下まで下がる。ここには有名店のドラッグストアも中に入っているので、そこで歯ブラシや生活必需品を買う様に男に言う。英語表記がないものはちゃんとどう言うモノなのかも説明した。
そこで、携帯が鳴ったので一旦財布を渡して好きに買い物するように言って店を出る。
表示された名前は、美咲だった。



「もしもし」
≪やっほー、アンタのことだからまだ寝てた?明日から沖縄って言ったじゃないー、お土産何がいいかな≫
「…美咲、昨日聞けばいいのに。っていうか何でもいいよ」が
≪えー、アンタもそういうの?早紀に電話したらそう言われたよ≫



早紀、今日の夜にフライトじゃなかったっけ?美咲電話したんかい。後でメール送っておこう。そうでなく、今はお土産の話だっけ。沖縄は何回かお土産も貰っているし、正直ソーキソバとかが良い。雪塩ももう前の無くなりそうだからそれでもいいな。



「ソーキソバとか雪塩がいい」
≪りょーかい。ところで美和珍しいね、どっかいるの?結構音がするけど≫
「ああ、ショッピングモールに居るの」
≪珍しい!美和休み前に行くとしたら近所のスーパーで済ませるじゃない≫
「ちょっと、已むを得ない事情が出来てね。明日は朝一の便で沖縄でしょ?気をつけて行ってきてね」
≪何か合ったわね、さては!まぁ、あたしは日本内だから困ったことがあったら電話してよ。帰ってきたらお土産渡しに行くから!≫
「うん、ありがとう。旦那さんと快斗くんにもよろしく。じゃ、」



通話終了ボタンを押して、溜息を吐いた。同期は察しがいい。
直ぐに何かあったと察するあたり流石としか言いようがないのだが、如何せん自分でもどう説明していいか分からないので、はぐらかしてしまった。だって、折角の楽しい旅行前にこのファンタジーな展開を説明しても、ねぇ。同期のことだから信じてくれそうだけど、旅行の邪魔をしようとは思えないし、それに思ったより自分でもちょっとどこか楽しいと思っている。危害を加えないと言ってくれたし、独りで過ごそうと思っていた長期休暇が異世界人との摩訶不思議な同居生活になった。



うん、気分的にショートステイに来ている外人を相手する気分。
どうせだからつまんないより楽しく日本を楽しんで貰いたい。どうして異世界から来てしまったかは分からないけど、来たってことは絶対帰れる。大丈夫。
そうだ、明日は千葉にでも行こうかな。久しぶりにドライブがてら、日本の海を異世界から来た男に見せても良い気がする。海を見ると気分が落ち着くし、内に篭るより気晴らしになるだろう。


携帯を仕舞って、小走りに店に戻ると買い物は終わっていたらしい。



『…遅い』
『すみません。買い物は大丈夫そう?』
『ああ、』
『じゃぁ、あと食材だけ買っちゃうから付き合って』


冷蔵庫にはあまり食材がなかったのだ。野菜に、魚、お肉を一通り買ってお酒のコーナーに行ってビールを入れる。無言で付いてきた男に一応、声を掛けた。



『キミ、20歳は超えてるよね』
『…消されたいのか、アンタ』
『いやいや、キミ年齢不詳っていうか良く分からなくてね』
『そういうアンタ、童顔だよな。それで29歳、ねぇ…』
『!!!!』



敢えて年齢言っていなかったのに、何故か知られていた!っていうか、女性の年齢を明け透けに言い放つとはデリカシーのない男だ。どうして年齢を知ったのか聞くと、リビングに飾ってあるバースデイカードで分かったらしい。やっぱり、状況判断というか知らない所で勝手に理解していた。
詳しい年齢は答えてくれなかったが、どうやら20代ではあるようなのでお酒を一緒に選ぶことにする。一人だけ飲むのもなんだし、お酒は楽しく飲むもんだ。



『言っとくけど、全部なんてダメだからね』
『…』



無言でぽいぽい籠に入れる男。買う気だったな、この男は。流石に無理だってば。
選んでいくお酒は、結構度数が高いし美味しいお酒を知っているな、とも思う。
途中で、地酒はどれだと聞かれたが、日本酒とか芋焼酎など諸々あるが、癖がない日本酒の方がいいだろうと一升瓶で八海山を買った。実は、結構好きである。



酒と食材が半々という買い物をして、カートを転がしながら駐車場に戻る。
ピッとロックを解除して、食材を後部座席に詰め込む。さっさと助手席に乗り込む男に文句を言うのも面倒臭くて、カートを指定の位置に返してから運転席に座った。



シートベルトを締める様に注意して、ちゃんと絞めたのを見てから車を発進させる。
帰り道、飾ってあったジンベイザメのぬいぐるみを弄られる。沖縄の有名な水族館で買ったお気に入りだ。口はチャックで開閉できて、口の中に居るエビは引っ張るとぶるぶる震えながら巻き取られるという癒しのぬいぐるみだ。何度もエビを引っ張られて、可哀想になって男から取り上げたのはいうまでもない。くつくつ可笑しそうに笑われたが、笑いごとじゃないぞ、まったく。



『年上の癖に可愛い趣味をお持ちで』
『都合の良い時だけ年下になるキミもふてぶてしいよね』



にっこり、と水面下の戦いなんぞもしてみたり。
生意気な男だとも思うけど、気を遣わなくてもいいところが楽だった。そう、相手もそう思ってくれるといい。何日になるか分からないけど、気を張ったまま過ごすのは辛い。
行きよりは、少し打ち解けられただろうか。



『アンタは変わっているな』
『キミも相当だよ』



軽口を叩きながら、帰路に着いた。

















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