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4。













こぽこぽ。
ゆらゆら揺れる。なに、ここはどこ。
気泡が目の前を通り過ぎって、消えていくのをただ眺めている。



なにもかんがえられない。
漂うままに、揺れて、身を任せてただその光景を見続ける。
ああ、ここはなんてきれいなんだろう。まるで、みずのなかにいるみたい。



静かな、ところだ。揺れるままに身体を晒していたけれど、本当にここはどこなのだろう。
見渡す限り、360度の水。どちらが上なのか、下なのか解らない。
けど、別にどうでもいいという気持ちが強くなる。
だって、寒くもなければ、苦しくもない。綺麗な、光景だ。



漂う中で流されて、辿り着いた先は光だった。
眩しい。光に目が慣れてくると、辺りが薄暗かったのだと初めて判った。
光の元へと近づくと其処には黄色い物体があった。



(なんだろう、船…潜水艦?)



黄色い物体の周りをぐるっと回る。結構、大きい。
なんだろう。ただ意識せず指を黄色い物体の表面へと触れようとすると、すーと指先が透けた。ここまで来ると、少しは思考能力も戻ってきていて、疑問が生まれる。



(……透けた)



指を引っこ抜く。自分の指をもう一つのそれで包む。別に、自分が透けたわけではないのだろうか。いや、けど目の前の黄色い物体には穴もなければ透けてもおらず、いうなれば変化がない。



再度、指先を黄色の物体へと向ける。




こぽり、と気泡が溢れた。



















泡が弾ける様に、意識が浮上する。
眼を開けたが明るさに戸惑って数秒馴れるまでそのままじっとする。手を翳して、目を開けると其処には見知らぬ天井で。



ふと、周りに視線をやって此処がホテルなのだと理解する。ああ、そういえば思いっきりアトラクションを満喫して、閉演前に疲れてホテルへと戻ったんだった。
自分が寝ていたということは、予想外に疲れていたのだろう。
これぐらいで疲れるなんて年を感じる。連れ回した相手は美和とは違ってケロリとしていたのに。解せぬ。




「……、」




そういえば、男の姿がない。
カードキーの使い方を教えたし、テーブルに置いていたもう一つがないので外に出たのだろうか。
ベッドの間にあるデジタル時計を確認したらもう、21:30を廻った所だった。
夕食を終えて、ホテルの部屋についてベッドに横になった記憶から途切れてるのでそこで寝ちゃったのだろう。一時間半くらい、余裕で寝てしまった。情けない。



両足を下ろして、ベッド際に腰掛ける。髪は解かれていて、サングラスもベッドサイドに置いてある。自分でした記憶はないので、あの男なのだろうけど。



(…意外と、マメだなぁ)



苦笑して、くしゃりと髪を掻き上げる。あの男は、見掛けによらず律儀な部分もある。
今日、夕飯の時男を観察しているとどうやら男は猫舌のようでスープを冷めるまで待ってたり、思えばパンを自分からとっていなかった気がする。あまり、好きじゃないのかなと目測を付けている。
不思議と、目を引かれていつの間にか見てしまっている。



はた、と美和は我に還る。
何、思い返したりしてるんだ。ぶんぶんと首を振る。頭から出て行かない、記憶の断片に今後が思いやられる。
ドライブの時とは確実に違う。この男の態度に対して探っていた時とは違う。今、わたしは興味の対象としての観察の域を超えて、感情で見ている。何を思い出して反芻しているんだ。



日中、決めたじゃないか。
興味からそれ以上に発展させないと。



いつか、彼は帰るのだ。
まだこの感情の名前を付けるには淡すぎるけど、だからせめてそれ以上に育たない様に蓋をする。
本来なら、出逢わなかった人だ。



だからせめて、“情報共有”での関係が崩れない様に最後まで――――…












(そういえば、なんの夢を見たんだっけ…)





窓の外には少し太った―――、上限の月。






深海の奥、















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あきゅろす。
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