7日目。 京都2日目にございます。おはようございます、美和です。 昨日明け透けな話をしてしまったとプチ自己反省をし、朝から男を起こして早速嵐山方面へと出発いたしました。無論、男には何も言いませんでした。 だって、面倒…デリカシーに欠けるので。なんか、今更、という言葉が頭を過ったのは置いておく。 早速、開き直ったわたしはうきうきと山陰本線の嵐山駅に到着した。勿論、有無を言わせず男を連行しているのだが、幾分少し隈が増した気がするが突っ込みません。 嫌なら嫌って言うだろう、この男は。 京都が好きなわたしは嵐山に来るのは実は初めてである。本当は苔寺に行きたかったが事前予約制である為、今回は断念。 嵐山方面に来たら、一度乗ってみたかったトロッコ列車からの保津川下りが今日のメインだ。いや、18時からの接待がメインなんだけどやっぱ仕事とプライベートは別だよね! 朝一のチケットを購入し、外で待っててもらった男に声を掛けようとして、固まる。 あれ、可笑しいな。 ちょっと眼を放していただけでこうも女性の輪って出来るものなのかな。 ここ数日でこの男が見目麗しいのは散々思い知ってきたが、外人観光客に囲まれている異世界人って、どうなんだろうか。 いや、もう突っ込みどころが満載過ぎて面倒臭い。 出来れば、素通りしちゃいたいと思うのは普通ですよね。 ちょっと、時間に余裕があるし人垣が減るまでそこのベンチで休んでよう、とくるっと回れ右をした。 したのだが、すぐさま腰に手が回ってきましたよ。 え!? 『……何処行く』 滅茶苦茶不機嫌でした! あれ、ちょ、いつの間に距離を縮めたのだろうか。結構距離があった気がしたのだけれど、と頭が微妙な違和感を拾う。 この男といると時々不思議な違和感が拭えない。 美和が戸惑っている間に、男は面倒臭そうに人が少ないスペースへと誘導された。 背後で不満そうな声が上がるけれども無視です。いっそ清々しいほどで。 この男といて視線が刺さるという意味を体験した美和は、されるがまま連れて行かれるのを甘んじる。 だって、まぁこうした方が早いしね。 『…いいの?熱烈なラブコールですけど』 『……』 無言のまま、男に一瞥され言葉を切る。美形に睨まれると、凄い迫力だ。 これは下手に口出ししたら殴られそうな雰囲気だ。いや、実際にはこの男は殴ってきたりはしないだろうがちょっと危険を感じる。 昨日の今日でもあるし、あまりこの男を挑発し過ぎるのは危険な気がした。 とか言いつつ、性格上言いたいこと言って挑発しまくっていた事実を棚上げする。年を重ねるとズルさを学ぶんですよね。 障らぬ神に何とやら。 強い視線から逃げるように下を向く。壁際に追い込まれ、更に眼付けられていると些か居心地が悪い。 外人観光客が多い中、この恋人の様な雰囲気を出して追っ払おうとしてるのは解るんだけど、腰に回された腕は解けないし逆に美和をすっぽりと両腕に収めてくる始末。 ちょっと、イラッとして顔を上げると口端を上げて不敵に笑う男がいて不覚にも心臓が跳ねたのは内緒だ。 さっきまで人を殺せそうなほど不機嫌だったのにいつの間にか、いつも通りに戻っている男に溜息を吐いた。意外にもこの男は並んで立つと身長が高いので首が疲れる。 『なんか、やっぱりキミは女の敵だね…』 『それはどうも』 (可愛くない…!) 内心、硬い雰囲気が消えてホッとしつつ美和はどこぞのバカップルの様な恰好を如何にかしたくて身じろぐががっちりホールドされていて動けない。その様子を見て男はくく、と低く笑うのが振動で伝わってくる。 本当に生意気な男である。 足でも踏んでやろうか、と企んでいると額に柔らかなモノが触れる。ご丁寧に、リップ音を付けた男の企み通り美和はガバリと上を向いてしまった。 『ちょ、な、』 柔らかな感触が残る部分を手で押さえ、表情は根性で取り繕ってみたが口端が引き攣っているのが解る。そんな美和を見て男は心底スッキリした様な顔をし、身長を有意に使って美和の頭の上に顎を乗せてきた。 時間が来るまで、このままであったのを追記しておく。 これはもしかしなくても逆襲ですか? [*前へ][次へ#] |