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3。







電車に揺られて、駅に着いた時には閉館20分前だった。
昨日の今日だが居候の男はギリギリまで読むだろう。意外にも医学書(超難しい本)を嬉々として読んでいて、更に借りてまで読破している。
まだまだ戸棚に陳列しているそれらを奴は総て読む気だろう。
それで少しは気が紛れると良いんだけど、なんて殊勝な考えもあって。しかし実際、奴は気を紛らわすためでなく知識として吸収するためだとしか考えられないが取り敢えずこちらの世界で興味あるものに出合えて良かった。



足早に図書館へと歩く。
家とは逆方向だがそんなに離れている訳ではないし、時間を忘れて読みふけっているだろう居候のお迎えだ。別に少しの寄り道位どうってことはない。
自動ドアを潜り、医学書コーナーに向かう。静かな館内に足音が響く。
奥まった場所に、古書特有の黴臭い匂いが微かにする。
一応蔵書は数多く存在しており、結構重要な蔵書もあるようだ。



(…居た)



長い脚を組んで、椅子に深く腰掛け医学書を読み耽っている。
時間はもう閉館手前なんだけど、これは気付いていないな。



『――…キミ、もう閉館だよ』
『……』



無言。
態度悪いな。いや、これは相変わらずな反応か。
この図書館に入った際、閉館ですのでと司書のお姉さんは言って戸締りなどしていたからそろそろこのブースにも来るだろう。
昨日も思ったが、凄い集中力だな。呆れつつも、端正な顔を見詰めるのもアホらしくて、思わず隣の席に腰を降ろす。
異世界から来たらしい男は矢鱈滅多ら見目麗しいが、気難しい。
急な仕事で身体は少し疲れている。ぐっと伸びをしていると隣から視線を感じた。



『あ、読み終わった?』
『…嗚呼、あと3冊は借りる』



積み上がった本の山を元の場所に戻し、数冊小脇に抱えて男はスタスタと前を歩く。
迎えに来たけど、なんかあまり意味がないような気がするけどま、いいか。
帰る際、オカルトコーナーで不思議体験談、スポット等という怪しい本が合った。本来なら興味をそそられることはなかったが、今回は目の前にその人物がいるので参考までに借りることにする。

















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あきゅろす。
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