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結局、夕暮れにはシチューを作って食べれるヒトには食べてもらった。水分も減っていき、健康な人達は結構回復が早かった。夜間、シャチくんと交互で休息をとっていたペンギンくんをミネルバさんは休むよう言った。
美和も特に何もしていないため、一緒に見張り番をしようとしたが、外はミネルバさん1人で事足りるらしい。美和は内部で点滴の滴下や、村人の状況を夜間見守ることになった。ペンギンくんは、扉付近の壁に寄りかかって眼を閉じている。その隣に腰掛けて、体動困難の人や熱のあるヒトなど時間起きに見回って身体の向きを変えたり、点滴の刺入部を見たりした。

うん、結構みんな回復が早い。脱水によって急性腎不全やその他の症状へ移行しなくて本当に良かった。まぁ、油断は出来ないがこの分なら大丈夫そうだ。

一通り寝静まった人達を見回って、ペンギンくんの隣に腰を降ろす。
壁に寄り掛かって、膝を立ててもう片足を伸ばしていた。ずっと同じ格好で、帽子すら取っていない。美和は、自分だったらおしりが痛くなっちゃう、と思って隣の男をじっと見る。起こしてもいいものだろうか。疲れているのだし、おしりの痛みなど気にならないのかもしれないけど…。

うーん、と悩んでいると隣から小さいが噴出すような音が聞こえた。
ペンギンくんは声を噛み殺して肩を揺らしていた。きょとんとして、美和はペンギンくんを見守るとしばらくして顔を上げてくれた。


「そんなに見られたら寝れないだろう」


右隣の男は声を潜めて言う。う、そりゃー遠慮なしにガン見したけれど、おしり痛くないかなーと親切心だったのだけれどなんとも言えない。結局起こしてしまったのだし、しょうがないので美和は取りあえず謝る。

「う゛、ごめんなさい。……あの、おしり痛くない?」
「ハハ、この位平気だけど」

声を潜めつつ、こそこそと話す。昔も一緒に夜こんな風にふたりで話したこともあった。ローくんがひとりで研究室に籠もっちゃった時など一緒に寝ていたこともあるのだが、不思議な感じである。小さかったのに、もうペンギンくんもローくんも立派な青年だった。
ふっと笑うペンギンくんは、かなりカッコいいと思う。そのまま、ペンギンくんは左手で美和の頭を撫でる。もう、みんな撫でてくれるのはいいんだけどそんなに子供っぽいのかなー。まぁ撫でてもらうのは気持ちいいからいいんだけれど。

美和は、じっとペンギンくんを覗きこむ。
うん、別に疲労たっぷりって訳じゃないけれど美和はポンポンと膝を叩く。

「膝で良ければ貸すよ?」
「……」

一瞬の間のあと、ペンギンくんに顔を背けられました。座っているよりは横になったほうが楽だし見回りだって済んだしあと数時間で日が昇るだろうからちょっとの間だけでも、と提案したのだが何かいけなかったのだろうか。
不安になって、ペンギンくんを覗きこむともう其処には何時も通りのペンギンくんが居ました。

「気持ちだけで十分だ」
「…そう?」
「ほら、少しお前も休め」

ペンギンくんは優しい。反対に気を使ってもらってしまった。美和はペンギンくんの隣の隙間を埋めてぴとっと寄り添う。貰っていた掛け布をペンギンくんにも掛けて、珍しく首を傾げている隣の男に寄り掛かる。少し上にあるペンギンくんの顔は、目を少し見張っていた。ふふ、と笑って美和は「おやすみなさい」と言った。

脱力したペンギンくんは、お休み、と返してくれた。




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あきゅろす。
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