[携帯モード] [URL送信]
f。



「――目的は俺らと同じだろう」


面白い、とローは不敵に笑う。
その言葉を受けて、ぞくぞくする。みんなも不敵に笑っていて、受けて立つと云わんばかりだ。

「十中八九、略奪の形跡がある沈没した船や集落はそいつらの仕業、のようだな」
「アチラさんも狙いは同じ。どっちにしろ迎え撃てばいいじゃん」
「そうだなー、寧ろアチラを潰せば総て揃うんだからいいんじゃない?」

あははーそりゃそうだ、と笑いあうみんなは頼もしい。
なんか本当にどうにでも出来そうで、美和は微笑む。
そういえば、とペンギンくんが美和に顔を向ける。なんだろう。

「もし、5体集めたとしたらどうなるんだ?」

素朴な疑問である。そりゃそうだ、アチラさんはほぼ既に5体集めたようなものなのに、どうして躊躇しているのだろう。フィンはこちらに居るのだけど、4体既に集めたならもう一つは支配している村にあるから手を出していないだけだろうか。いつでも取れるからと。
フィンはペンギンくんが気に入っているようで、嬉々として教えてくれた。心なしか声が弾んでいる。ローくんとはえらい違いだ。

「えっと、『私達は引き合うから、5神体が集まれば必然的に引き寄せられる可能性があるわ』って」

実は『生贄に出来なくて残念よ(ハート)』と付いていたんだけど色々突っ込み所満載なので省く。美和は、どうして言わないのとフィンに怒られたが無視。話が拗れる。
それよりも5体が揃うと引き合うってどういうことだ。続きを促すと渋々フィンは話してくれた。

「『もともと、私達神は個体だったの。つまりは自己が目覚めて分離していったら全部で7対になったのよ。宗主様が私達6対の生みの親っていう感じかしら…、兎に角宗主様以外が集まると自然と引き合うのよ。だから、正直私も何かに引っ張られている感覚がある』」

どういう風に引き合うのか、不思議なのだけれど飛んでいってしまうわけではないらしい。以前にも言っていたが、水晶髑髏個体では動かないそうだ。もし動くとしたら引き合うように周囲を操るらしい。人にとっては導かれる感覚のようだ。悪意で持って一同に集まるのはほぼ前例が無いから分からないそうだ。閉鎖された島で、黄金のことも外に漏らさないようにしていたらしい。普通、神を使って黄金を欲する人は罰当たりだったろう。
まぁ、今現在罰当たり続行中なのでなんともいえないが。

「つまり、次の1体を確保しといたほうが楽っちゃー楽か。んん?そうなると全部手に入るんじゃね?」
「そうだな、しかしやつらは何故5体総てを集めてしまわないんだ?」

「『条件は私達御神体を集めるのであれば、同時に生贄も存在しないと成り立たないからよ。私は外界と交信できるから良いけど他はほとんどしないの。私達が一斉に集まるときは、宗主さまを呼び出すときだけだもの。呼び出すには生贄が必要ってわけ。どちらかが欠けていても中央の宗主様に会えないのよ。私達神を無為に集めれば、天罰が下る。だからどこかの馬鹿は躊躇してるんじゃないかしら。この島では巫女にしか宿せないと古い風習を護っていて、純血やら血統を護ってきた保守的な人間ばっかだからもう巫女は数人しか居ないはずよ。神は悪意のものの中にしるしは宿さないわ』」

なるほど、と理解する。
そうなるとあちらは生贄という存在をまだ確保できていないということだ。そりゃそうだろう。端々に感じられた残虐性がこの島に残された集落でもその爪痕を残している。神はそんな奴らにしるしを与えはしないだろう。巫女も居るが、それは生贄候補のことであって正しくは資格がないのだから。
それにしても、こちらにはフィンが居るからその掟やら規則など知りえるのは容易いが、 相手も熟知しているようだ。大方エグイやり方で聞き出したんだろうが。

「つまり、アチラさんは手詰りってわけね」

シャチは口に食べ物が詰まったまま、喋る。ごくん、と飲み込んでペンギンとローを見て一度頷いている。やっぱりツーカーだな、なんて思う。直ぐにシャチくんが視線を美和に向けてきた。


「美和、相手が手詰りであって巫女以外に生贄が現れれば、確実に狙われる」
「…うん、」

そっと胸元に手を当てる。
巫女が生贄の資格を持っていても、しるしがなければ意味がないのだ。そしてやつらの狙いはこちらと同じで“黄金”である。4対の神を集めて邪魔をするものは排除している残虐性を持ち合わせているひとたち。丁度良く生贄が現れれば、美和はシャチの言ったとおり狙われるだろう。そしてこちらは海に流されたはずのもう一対の神様を持っている。

「おれ達から離れるなよ」

たぶん、アチラ側に上陸者がいるとバレるのは時間の問題だろう。狙いが同じなら、戦うまでだ。美和は、クルー全員から不敵な視線を向けられて背筋がぞくぞくとする。
みんな、護ってくれると言う。みんな格好良すぎるよ。

「お手数掛けるけど、宜しくお願いします!」

おう、と口々にみんな笑顔をくれる。隣のミネルバさんに頭を撫でられた。
相手が誰であれ、本当に大丈夫だと思う。わたしはローくんに視線を向けるとニヤッと笑われた。なにさ、泣かないように顔に力入れてるからって、笑わなくたって良いじゃん。


作戦会議、の結果。
敵上等、相手になってやる。





[*前へ][次へ#]
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!