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正直、この一味は手が終えないと思った。

たぶん、わたしが心配しなくても、もし呪われていても撥ね還してしまいそうだと思います。わたしは今、絶賛お仕置き中です。


「――うう、痛みが待ってるから口だけって言ってたのに…」



最初、渋々ながら水晶髑髏を神殿へ還すことを了承していたが、わたしに負担が架かると知って約束を反故しようとしてくれた優しい仲間たち。それを押し切って優先順位をとるようにした美和は、自分が死ぬのも嫌だしみんなが呪われるのも嫌で相談というより神様が脅しの内容でみんなに意見をごり押しする形になってしまった。心配させて申し訳ないが、最善の方法が少しの痛みで手に入るなら簡単だと思ったのだけど、目が覚めたらみんな悪鬼になっていたのです。
なんだかんだ、相談しなかったわたしを怒って最後に纏まったと思ったのだけれど違ったようです。

「誰もお仕置きはしない、なんて言ってないだろ。無駄口叩いたからもうワンセット追加ー!」
「うわーん!!シャチくんの鬼ー!」
「馬鹿だな美和、文句言う前に身体を動かせ」

鬼です。鬼が居ます。
優しいのか優しくないのか良くわかりません。わたしの心配をしてくれて躊躇してるれた仲間たちは次第に腹が立ったようです。主にわたしに!
下っ端の美和に責任など元々求めてなど居なかった集団はどうやらひどく苛立っています。ううう、出しゃばってすみません。わたしはお仕置きという名の愛の特訓を受けています。当然、わたしは3日間上陸禁止となって船番に毎日扱かれる事となりました。

その3日間、船番はシャチくんペンギンくんペアです。いつもトレーニングの師匠をしてくれていたシャチくんが鬼です。いつものノルマの3倍セットを増やされました。この位ですんで良かったと思え、と笑顔で凄まれた時本当に声が出ませんでした。もう、必死に頷く事しか出来ず今に至ります。ペンギンくんも時折見に来てくれるんだけれど、笑顔で頑張れとしか言いません。ペンギンくんもかなり怒っているようです。みんなの優しさが痛いです。嬉しいんだけど、スパルタです。

一緒のチームだったローくんとベポは、シャチくんに任せて上陸しています。ローくんはシャチくんにお仕置きを託しているようで、精々頑張れと皮肉に笑ってジャングルに消えていきました。ベポも実はシャチ切れると怖いから、頑張ってと耳打ちされたとき本当に逃げ出したくなりましたが踏ん張りましたよ、ええ。
みんなの愛の拳と思って受けなければいけないと思ってます。はい。

当然水晶髑髏の神様も謹慎です。
あれから、河川を遡って湖畔に停泊した海賊団は、チームに分かれて今島を散策中です。主に地理、方角、外敵など情報収集が目的で3日目は夜集合して話し合いをする予定になっています。子でんでんむしを各一機ずつ持って連絡する仕組みになっていて、サバイバルって凄いと思いますが、生き残れるか不安ですよ。


「お、終わった…」
「ご苦労さん!一旦休憩して船番の規則や動力源を教えるからついて来いよー」
「はいいぃ!!」

確かに大切なことだ。船番は基本三人一組でやっているという。今回シャチくんペンギンくんペアだったので初心者の美和と3人(ほぼ2人)で任されたのだ。ぶっちゃけ、わたし居なくてもOKということなんですが、わたしも一応出来ることはやりたいので根性で頑張ります。ぜいぜいしながら汗を拭って、前を歩くシャチくんの後を追いかける。
あまりわたしに縁のなかった動力室で船の操作方法などを説明される。緊急時船を動かすこともあるため、確かに必要だ。まず発着時必ず錨をどうにかしないといけないことだけ覚えてれば良いと言われる。電動の巻き取り式なのでわたしでも出来る。
後は緊急時の連絡はでんでんむしで、コードを教えてもらった。後はもっぱら見張りや掃除、船体のチェックである。大雑把にだがやることをやるように、とシャチくんにいわれる。はい、先生。


「シャチくん、買出しとかはまた別なんだよね」
「もちろん。船が一番無人に出来ない。買出しは上陸するやつが担当する。主に上陸専攻は買出し、ログや島の情報、海軍や他の情報の聞き込みなど航海に必要なものを準備する」
「そっか、出先で緊急情報があったときも船番が情報を受信して、各々に連絡するのね」
「あたり」

船内を散策しながら説明を受けていると、凄い船体が揺れた。
地震なんてモンじゃなく、本当にザッパーンという感じに大揺れで強かに壁に頭を突撃する寸前にシャチくんが支えてくれた。
なんだなんだ、と事態を把握するために瞬間シャチくんは走り出す。わたしも慌てて着いて行ったのだけれど、甲板の出入り口を開けた瞬間原因が分かった。
そこにはオッキナなまずが居ました。

「ひぎゃあああああ!!な、ななまずぅ!!?」

人を丸呑みできそうななまずなんて見たことなかったわたしは、慌てる。平然としているシャチくんは、蒲焼…と呟いていたけれどそれどころじゃないでしょう。こんな大きいものに突進されたら船がひっくり返っちゃう。

あわあわ状態のわたしは右往左往していると、シャチくんは大丈夫だってとポンポン頭を叩いてくるが落ち着いていられるわけない。初めて怪獣みたいな生き物みて落ち着いてられない。

「大丈夫、もう平気だって。ペンギンが捌いたし」
「ええええええ!?」

目の前でスパン、となまずの頭部が消えました。
目を瞬いてる間に終わっちゃったというか、ごしごし目を擦ってなまずを居た場所を見るとばしゃんと大きな波飛沫が立ち上がって巨体が倒れたのだと知りました。グラングラン船体が揺れて、目の前の光景に食い入っていたらひょこっとペンギンくんが甲板の柵に現れました。

「ペンギン、飯取れたなー蒲焼にしようぜ!」
「食べがいがありそうだな。――美和?どうした」

「……なんでも、ないです…」

興味本位で甲板の縁に近付いて美和は青褪めた。こんなでっかいなまず、食べるのですかふたりとも。どうやって倒したのか知らないけど、規格外のひとたちの集まりなんだと再認識致しました。こういうひとたちなら、呪いも怖くないんだろうななんて遠い目をしてしまった。

喜んでいるシャチくんは、またもやでっかいなまずをスパンと大雑把にぶった切っていて湖畔で火を起こして言葉通り丸焼きにしました。すごい、男の料理だ。
意外に美味しくて吃驚したけど、ふたりの何処に大きななまずが食されて消えてしまいまして、そちらにも吃驚です。


(飯食ったから次、柔軟と走りこみだ!)
(ええええええ!?)


エンドレス3日間でわたしは愛という特訓で扱かれました。身体中痛い。



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