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だ。




結果は満場一致で開けるとなって、錆びて鍵穴が潰れてしまった宝箱を取り囲む。これは鍵自体を壊さないと開けられそうになかった。ああ、これ無理だ。船長何とかしてくださいよ、と船員が口々に言う。え、ローくんに錆びた鍵を開ける特技が合ったのか。わたしが吃驚している合間に、音もなくローくんは鍵を外してしまったらしい。

わたしは後ろの方でミネルバさんと経緯を見守っていた為、詳細が良くわからず開いたということしか解らなかった。


「キャプテンどうやって宝箱の鍵開けたんだろう…」


思わずミネルバに尋ねると、彼女は笑ってウチの船長は頼りになるってことと答えてくれた。うん、まぁローくんって無愛想に見えるけど仲間想いだし、船員がローくんを慕っているのが良くわかる場面でした。
わたしは、開いたーと盛り上がる集団の外側で、ぴょんぴょん跳ねる。中身、なんだったんだろうと気になって人の隙間から顔を覗かす。視えたのは、透明な球体に本、一枚の紙だった。


(あれ、けれど丸じゃない…?)


わたしは透明の物体に疑問を持って、見詰めた。誰かが触って持ち上げて漸く判った。球体じゃなく、列記とした人体の頭部だった。しゃれこうべ、といっても見事なクリスタルで精巧な緻密品だった。遠目からでも人体模型の頭部となんら損傷はない位だ。
あれだ、わたしは某アメリカの作品を思い浮かべた。


「…………」


有名なテーマソングが頭を過ぎる。
しかし、誰かが他の手に渡したとき頭蓋骨と“瞳”が合った。途端、ちくりと胸が痛む。咄嗟に胸元を押さえるが、一瞬で痛みは消えていた。
頭蓋骨と目が合うなんて、普通じゃ有り得ないのにわたしは何故かそう想ったのだ。わたしは再度頭蓋骨を見るが、やはり窪んだ部分に目はない。目線だって合いやしないのに、わたしは首を捻った。


「どうやら中身はこの三点だな」


ローくんは船員が廻し終わってテーブルに鎮座した頭蓋骨を持つ。医者の目から見ても精巧な造りらしく、面白そうに見やった後ペンギンに放った。難なく受け取ったペンギンくんも繁々と眺めている。
ローくんは古びた装丁の本を手にとってパラパラと捲る。一部分でピタリと止まり、面白そうに笑った。ペンギンに本を渡して呼んでみろというように見開きのまま渡す。ペンギンは慣れた様子で、頭蓋骨をテーブルに置き受け取った本に目を通す。



「ああ、これはお前らが好きそうな“話”だな。しかも今から50年ほど前らしい――“○月8日、マヨル島に到着。鬱蒼と茂った森に囲まれ、河口から船を島の中央へ向かうことが出来た。海と繋がった泉に祭壇がある。歴史的分化が色濃く残っていそうだ。明日、この島を探索するとしよう”…“○月9日、猛獣が行く手を阻むが所々に遺跡がある。内容を解読すると不思議な内容だった。7対の神の怒りに触れたものは、死を――何かを祭っているようだ。○月10日、神殿の一つに到着。祭っている神はクリスタルの髑髏、隠し扉の奥に上座に座っている。手に取るにはあまりにも神々しく、我等は手を出さずに戻ることにした。外に出ると先住民たちが部下を囲んでいた。我々が何も手に持っていないのに驚いていた彼らは我等を海賊と勘違いしたようだ。○月11日、先住民と和解した。我らは遺跡研究を目的とした探索チームであると理解してくれ、神には触れないという限定で島を周る事になった。ログが溜まる約1ヶ月間協定を組んだ。彼らは我らの探索を許可する引き換えに、我らは彼らに外の世界のことを教えることとなった。彼らは神の存在を絶対としており、我らに一つ忠告をしてくれた。悪意を持って神に触れていたら呪われていたと……”」



例に漏れずペンギンは笑って船員に内容を読み上げる。ちょっと最後の方ホラーが混じりやしませんでしたか。美和はゾワリとして頭蓋骨を見る。読んでいた航海日誌の文面でこの髑髏がもしかして、と思ったのは皆同じらしい。
言葉を切ったペンギンくんの合間に皆髑髏に注目して、皆ばっと視線を手に向けた。途端ギャーと騒然となったのは言うまでもない。


「おいおい触っちまったよ!呪われる!」
「ギャー、初っ端からこんな展開かよ!」
「悪意の方だったー!!」


オカルト展開ですか?



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あきゅろす。
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