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じ。


肩を震わして笑っているペンギンくんは、どうやら扉の前に誰か来たのに気付いたが一向に動かないことを不思議に思ってドアを開けてくれた様だ。なんていい人なんだ、ローくんの仲間って出来た人じゃないと務まらないだろうな、と思った。綺羅綺羅と尊敬の眼差しを送っていると、シャチくんはまだ眠っているから甲板に行くことになった。



「――で、居ても経ってもいられなくておれのとこに来たってことか」


甲板に出ると昨日の宴の名残で酒瓶や酒樽が転がっている。美和とペンギンくんは船内へ繋がる扉の横に並んで腰を掛けて座る。わたしは事のあらましをペンギンくんに話し、膝に顔を埋める。話していて情けなくなった。


「別に、何もなかったよ」


ポンポンと頭を撫でてくれるペンギンに美和は嘘、と勢いよく顔を上げる。
本当のことを言って欲しいとペンギンにお願いすると、ペンギンくんはふと目線をわたしの首元に留める。なんだろうと首を傾げると、一瞬でペンギンくんは「ああ、大丈夫。本当に何もなかったから」と顔面に笑顔を張り付けて言った。必死な美和は引き攣った笑みに気付けなかった。



「…本当?」
「ああ、酔っ払っていたけどすぐに船長がお前を連れて行ったから大丈夫。それより、」


美和はペンギンくんが嘘を吐くわけないと思い、やっと安心した。
胸を撫で下ろして、安堵しているとペンギンくんが心配そうに、しかし言いにくそうに言葉を続けた。


「その、…身体は大丈夫か」
「??うん、二日酔いとかはないみたい」

きょとんとして、質問に答える。美和ってタフだ。頭もいたくないし喉だってがらがらになっていない。お酒飲むと結構喉が掠れるんだけど平気みたいだし。
意図が分からなくて美和はペンギンくんを覗き込む。ペンギンくんは顎に手を置いて思案気だ。直ぐに心配するな、と笑顔をくれる。



「…髪、長くなったな」
「あ、うん。あれ、ゴムどこいったんだろう」


ペンギンが髪に触れて美和は自分の髪が解けているのにやっと気づいた。髪の天辺から先に手をやると引っ掛かっている様子はない。おかしいな、と首を傾げるとペンギンくんは苦笑してたぶんローくんが持っていると言った。


「さてと、ほらもう部屋に戻ろう。船長の部屋にはシャワーもあるしさっぱりしてこい」


ペンギンくんはこのまま動力室に向かうと言って別れた。その際に、このおっきなつなぎじゃなくてプレゼントしたつなぎにするようにと助言された。もしかして汗臭かったのかもしれない。そういえばお酒だって染み込んでいる。美和は船内を歩いて項垂れる。まぁ、釈然としないけど何もなかったみたいだし、わたしは一旦部屋に戻って紙袋で一杯のまだ紐解いてない荷物を漁る。下着と買ってもらった服の中から黒のタンクトップと白い短パンを取り出す。そして新しいつなぎと歯ブラシを持って、ローくんの部屋の前に立つ。



「…おじゃましますー…」


そろり、と部屋を覗き込むと背を向けたままのローくんが見えた。美和は一応、「お風呂借ります―」と声を掛けてから室内のドアに手を掛けた。返事はないが、汗臭い(誤解)といわれた美和は早くシャワーを浴びたかった。ううう、汗臭くて酒臭い女ってなんて最低。


つなぎを脱ぎ捨て、ユニットに入る。シャワーの温度を合わせて全身に被る。気持ちいいな、と悶々とした気持ちがお湯に流されるような爽快感があった。美和はローくんが使っているであろうシトラスの香りのシャンプーを勝手に借りる。ボディソープも借りてゴシゴシ洗う。顔も洗って、一息ついてからタオルで身体を拭いた。


新しい下着を身に着ける。あの恥ずかしい買い物で販売員のおねぇさんが寄せてあげるタイプだと言っていた。着け方なんて適当だったわたしに短時間で、レクチャーしてくれた。確か、屈んで胸を寄せて両サイドから肉を持っていけばいいんだっけ。凄いアバウトにやってみたが結構いつもより肉が寄っている。おおおお、おねぇさんすごい。ちょっと今時の下着ってすごいと感動しながらタンクトップを着る。下は短パンを履いて、貰ったつなぎに袖を通した。新品のつなぎは袖を捲り上げなくても丁度良くて、すこしだぼついた感じはあるもののピッタリだった。幅に猶予があるのはいいことだ。



(う、嬉しい!!)

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あきゅろす。
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