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例の如く、美和はまたローの腕の中で目覚めた。

今度は隈があるけど端正な顔が目の前にあった。またか、わたしはうとうとしながら身体に周っていた腕を外して起き上がる。ぐっすり寝ているらしいローくんから抜け出して、わたしは伸びをした。残念ながら既にローくんの腕の中で目覚めるのに違和感が薄らいでいた。


顔を洗って歯磨きをすると目が覚めた。わたしは部屋に戻ると鼾をかいているベポと静かなローくんを横に、乾いている服を畳んでカバンに詰める。時計を見ると、7時前だった。もう一度寝ることも出来るけど、わたしは階下に降りることにした。身一つで、そのまま階段を下りると従業員さんが厨房で働いていた。


「おはようございます、あの女の子傷は大丈夫でしょうか」
「ああ、君は昨日の!ありがとう、もうすっかり元気で腫れてはいるけど大丈夫だよ。今日は一応休暇をあげたよ」


豪快に笑う店長さんは朝ごはんを8時に部屋に届けてもらうようにした。あの様子じゃまだ絶対寝てると思うし、わたしは宿の外に出てみる。


朝はあの夜の喧騒が嘘の様に静かだった。少し散歩にでも行こうかと思い立つ。そうだ名案だと思い、わたしはそのまま海岸に向かう。港でなく店長さんが砂浜の綺麗なビーチがあると言っていた。往復で30分くらいと云っていたし、わたしは閑散とした街を抜ける。


乾燥地帯だからヤシの木のような木とか、南国特有の派手な花もちらほら咲いていた。防風林のような林を抜けると綺麗な砂浜についた。波の音が響く中、太陽は朝焼けで海面を綺羅綺羅飾っていた。
そのまま静かなビーチを散策していると、波に打ち上げられたらしい宝箱と砂時計みたいな形の変なものが転がっていた。なんだこれ、と良く見ると球体のガラスの真ん中にコンパスがついている。ペンギンくんの腕についていたログポースみたいだけど形が違う。それにもう一方は宝箱にしても小柄で結構古いモノだった。

ジッと打ち上げられたものを見詰める。拾って帰るかどうするか。


「…え、あれ、」

思案していると何かに操られるように、身体が勝手に動いた。両手にしっかりと抱えていて、拾ってしまったことに戸惑う。しかし、一度拾ってしまって何故か離す気になれず、そのまま打ち上げられていた宝箱と砂時計のようなものを抱えて、宿に戻ることにした。どうしてだか、そうするしか頭に浮かばず半ば義務のように持ち上げる。普通だったら持って帰らないのに、と違和感を感じた。しかし抗えず、そのまま帰路に着いた。
戻ると、8時前でわたしは扉の前でノックした。


「ローくん、ベポ、起きて」
起きて扉を開けてくれないと中に入れない。シーン、室内は静かでわたしはもう一度ノックしようとしたら不機嫌そうなローくんが出た。



「…テメェ、何してる」



いや、ちょっとそんなに凄まなくたっていいじゃないか。わたしは縮こまって鋭い眼光の圧力に、固まった。朝起こしたからって、そんなに不機嫌になんなくたっていいのに。とそこに能天気なベポの声が聞こえた。


「あれ美和お帰り。何処行ってたの?」


ほっとしたわたしに、ローくんは舌打ちを打って部屋に入れてくれた。その時、一緒に抱えた箱に注目が集まる。なんだこれ、とローくんがあの砂時計を掴んだ。当然だろう、いきなり宝箱を持った人物が現れれば取敢えず疑問に思うだろう。ローくんにことのあらましを告げると、しげしげ眺めた後ローくんは興味無げにそれらを机に置いた。

「あの、拾ったの。これ何か分かる?」
「――ああ、それはエターナルポースと廃れた箱だな。かなり古い…結構昔のものだな」


そんな昔の物がなんで今更打ち上げられたんだろう。そしてローくんの口から聴きなれない言葉が出る。

「エターナル、ポース…?」

初めて聞く単語に首を傾げる。このコンパスに永久的に島の磁力を記憶させてログに関係なく島へ行けるようだ。しかし、行き先が“MAYOL”と書いてあった。
島の名前をほとんど知らないわたしは皆目見当が付かず、首を傾げるばかりだ。

「“マヨル”島…?かな」
「次の島の名だ。つまり次のログの先は拾ったものと同じ所だ」

そうか。ログはもう溜まるし偶然にも同じ行先なのか。それじゃこの宝箱は何だろう。取りあえず朝ごはんがきたので食べることにした。どうせ此処で開いても意味無いし、宝箱は船に持ち帰って見聞することになった。


「…おかしいな、」
もうなんともない。あの、宝箱を離しちゃいけないと思っていたけれど意外にもあっさりとローくんに渡してしまった。置かれた宝箱に首を傾げつつ美和はテーブルに向った。



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あきゅろす。
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